「置いていける訳ないだろ。一緒に来い」

このままこの国に残ったら、ジュリスとベリクリーデは非常に危険だ。

万が一、ファニレス王宮に侵入し、俺とシルナを逃した下手人であることが判明したら。

その時点で、二人はこの国でずっと身を隠さなくてはならなくなる。

だったら、一緒に逃げるべきだ。

この国に取り残されるくらいなら。

…しかし。

「いや、俺達は一緒には行けない」

ジュリスは、きっぱりとそう断った。

「な…。…どうして?」

「まだやるべきことが残ってる。だから、帰れない」

「やるべきことって何だよ…!?もし俺達が手伝えることなら、一緒に、」

「これは俺とベリクリーデにしか出来ないことなんだ。気持ちは嬉しいか、お前らがいるとむしろ足手まといだ」

「っ…」

ここまではっきりと拒絶されてしまうと、これ以上強くは言えなかった。

だけど、ジュリスの言うことはもっともだった。

俺とシルナが王宮を逃げ出したことがバレたら、イシュメル女王はすぐに捜索を開始するはずだ。

ジュリスとベリクリーデの目的が何であれ、お尋ね者となる俺達が二人の傍にいたんじゃ、間違いなく足手まといだ。

…畜生。

ジュリス達は俺のことを助けてくれたのに。

俺は、ジュリス達を助けることが出来ないなんて。

尻尾巻いて逃げ帰ることしか出来ないなんて…。

俺が歯を食い縛って、忸怩たる思いを堪えているのを察したのだろう。

ジュリスは、ふっと笑ってみせた。

「俺達のことは気にするな。…何度修羅場を潜り抜けてきたと思ってるんだ?」

「…ジュリス…」

「大丈夫だ。俺とベリクリーデも、用事を済ませて必ずルーデュニア聖王国に帰る。必ずまた会えるさ」

…。

「…約束だぞ、絶対に戻ってこい。ジュリスも、ベリクリーデも」

「任せろ」

「またねー」

ジュリスは力強く頷き、ベリクリーデはひらひらと手を振った。

約束したからな。確かに。