神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「…ってな訳で、今、王宮に忍び込もうとしてるところなんだ。…分かったか?」

「ほぇー」

…分かってないな。その声と返事は。

俺、結構丁寧に説明したつもりだったんだけど?

今は、これ以上手取り足取り教えてやる時間も、余裕もない。

とにかく、前でも後ろでも良いから、進まなくては。

「まぁ、あれだ。とにかく、ここから出るのが先決だ」

「?戻るの?」

「出来れば、王宮の中の何処かに出たいんだが…。こう入り組んでたんじゃ、分からないだろ」

細い分かれ道がいっぱいで、右に行けば良いのか左に行けば良いのか。

天井も、見上げるほど高くなったかと思えば、這いつくばらなければならないほど低くなったりして。

道も平坦じゃなくて、急に勾配が現れたりして、暗がりだと余計に歩きにくい。

こういう時は…左手の法則、だっけ?一方の壁に手を当てて、ひたすら進めば良いっていう…。

でも、この状態じゃそれさえも…。

…すると。

「シルナと羽久を探してるんでしょ?」

「ん?あぁ…」

「それなら…うーん…。…あっちかな?」

「は?」

ベリクリーデは、分かれ道を右に進み始めた。

「ちょ、まっ…!勝手に進むなって!」

「こっちかなー」

「こらっ!待てってば」

俺はベリクリーデを見失わないように、必死についていった。

足元も悪いのに、ベリクリーデは妙に確かな足取りで、てくてくと歩いていく。

今、自分達が何処にいるかさえ、定かではないのに。

果たして何処かに辿り着けるのか、その先が一体何処なのか、俺には分からない。

それでも、てくてく歩いていくベリクリーデの後をついていくと…。

「うーん、この辺かな〜」

「あのな、お前…。勘で行動するにも程が、」

「ごそごそ…。あ、着いた」

「!?」

ベリクリーデは頭を屈めて、よちよちと赤ん坊のように這い出していった。

薄暗がりの向こうに、明るい室内の灯りが見えた。






…そこが他ならぬ、シルナ・エインリーと、羽久・グラスフィアの客室だったのだ。

ベリクリーデ、俺、一生お前の勘についていくよ。

…冗談だけど。