神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

井戸には、太いロープが1本だけ吊り下がっていて。

それに掴まれば、何とか降りられそうだったが…。

…この井戸を降りるのは、なかなか勇気が要るぞ。

ホラー映画なら、俺もベリーシュも、今頃井戸の封印を解いた愚か者として、呪われているところだろうな。

なんて、俺が縁起でもないことを考えていると。

「…?どうしたの、ジュリス。先に行くよ?」

「あ、いや…ちょ、ちょっと待て」

まったく恐れ知らずのベリーシュは、さっさとロープを掴み、井戸の縁に足をかけていた。

お前、ほんと度胸あるな。

躊躇ってる俺が情けなくなってくるじゃないか。

「?何?」

「ベリーシュ、お前は2番手だ。俺が先に行くよ」

え?レディーファーストじゃないのか、って?

今だけはな。

もし、ロープがブチッと切れて、井戸の底に真っ逆さま…なんてことになっちゃいけない。

それに、本当にこの中に隠し通路があるかどうかは、まだ分からないのだ。

ベリーシュに危険を犯させる訳にはいかたい。

「でも、ジュリス…」

「良いから。俺が先に降りて先導する」

「…うん、分かった。くれぐれも気をつけてね」

そのつもりだ。

俺だって、ここまで長く生きてきたのに。

井戸の底に頭を叩きつけて死亡、なんて御免被るからな。

俺はロープをしっかりと掴み、軽く引っ張ってみた。

…古びてはいるが、ロープ自体はしっかりしてるな。

これなら、大丈夫だ。

俺は井戸の縁に足をかけ、ロープを手繰って、井戸の底に降り始めた。

うわぁ。スリルある。

まったく何やってるんだ、と思うけど。

こんな国に自ら足を踏み入れた時点で、今更だよな。

そのまま、俺は下へ、下へとゆっくり降っていた。

降りるに従って、段々と陽の光が届かなくなり、代わりに、朧気ながら井戸の底が見え始めた。

真っ暗闇の井戸の底に、水面が揺らめいているのが目に入った。

しかし、それは見かけだけだった。

降りきった井戸の底は、既に干上がっていた。

水面に見えたのは、小さな水たまりに過ぎなかった。

恐らく、雨水が滲みて溜まったのだろう。

充分に足が着く。…これなら大丈夫だ。

「ジュリス!大丈夫!?」

井戸の上から、ベリーシュが大声で声をかけてきた。

「ロープ、引き上げようか!?」

「いや、大丈夫だ!ちゃんと底に着いた。気をつけて降りてきてくれ!」

「分かった!すぐ行く!」

ベリーシュが大声で答え、ベリーシュもロープを掴み、下降を開始した。

頼りになる女だよ、あいつは。

ベリーシュは少しずつ、ロープを伝って降りてきた。

二人で、井戸の底に到達。

さすがに狭いな。

「大丈夫か?ベリーシュ」

暗くて、顔がよく見えないが。

「うん。ジュリスも無事で良かった」

ベリーシュは少しも恐がっている様子はなく、いつも通りしっかりとした受け答えだった。

…さすが。