いくら警戒心が緩いと言っても…さすがに、最低限の警備兵くらいはいるだろうからな。

それをどうやって撒くか…。あるいは無力化するか。

「私がやろうか?」

俺が考え込んでいるのを見て、察したのだろう。

ベリーシュが自ら、そう申し出た。

「今なら星が出てるから、星辰剣を使える」

ベリーシュの使う星辰剣は、星が出ている時刻…夜の間に真価を発揮する武器だ。

ベリクリーデの魔法は大雑把にも程があるが、ベリーシュはちゃんと、力の加減ってものが出来る。

ベリクリーデのような高威力の魔力は扱えないが、こと星辰剣の扱いについては、ベリーシュの方が遥かに頼りになる。

やっぱり、何事も大雑把は良くないな。

この状況では、俺よりもベリーシュの方が戦闘力は上だろう。

…だが…。

「…いや、出来るだけ手荒な真似はしたくない」

「じゃあ、どうするの?」

「俺がやる。ただ、何かあった時は手助けを頼む」

「分かった」

背中を預けるぞ、ベリーシュ。

…こう言うと、俺が何か大層な作戦を決行したんじゃないかと思われるかもしれないが。

実は、俺がやったのは大したことじゃない。

一番シンプルで、かつ、一番確実な方法を取っただけだ。

つまりは、さっさと塀を乗り越えて、さっさと警備の王城兵を引っ捕らえ。

そして、そいつに杖を突きつけて脅す、という作戦とも呼べない、稚拙な作戦だった。

だが、逆にこのような大胆な作戦で乗り込んでくるとは、王城兵達も予測していなかったようで…。




「…動くな」

「ひっ…!?」

容易く塀を乗り越え、塀の内側を巡回している王城兵に、背後から忍び寄り。

目にも止まらぬ早業で、俺はそいつを背中から抱え込むように拘束。

喉元に、杖の先端を突きつけた。

…こうなると、最早魔導師かどうかなんて関係ないな。

そしてベリーシュも、何かあった時すぐ俺を助けられるよう。

星辰剣を手に、俺のすぐ傍に待機していてくれた。

「な、何なんだお前達…!?」

「喋るな」

俺は険しい、厳しい声で告げた。

「下手に動くな。…死にたくなければな」

「…ひっ…」

我ながら、悪党さながらだな。

この国の非魔導師の扱いの酷さに対する怒りを込めれば、このくらい容易かった。

「聞かれたことにだけ、忠実に答えろ。…王宮内に、シルナ・エインリーと羽久・グラスフィアがいるだろう。知ってるな?」

「そ、それが何だと…ひっ」

「聞かれたことにだけに答えろって言っただろ」

杖の先端を強く、喉元に押し当てると。

王城兵はすっかりビビって、緊張のあまり息を呑んでいるのがはっきりと伝わってくるほどだった。

…王城兵が腰抜けで何より。