神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

信じられない。

ここまでやるのか。あいつら。

この新聞記事を俺達に見られたらキレられると分かって、この情報からは徹底的に遮断して。

さも、俺達がキルディリア魔王国に寝返ったかのように、国民達に宣伝して…。

別に、今は虚偽の報道でも良いのだ。

後に、これを事実にすれば良い。

俺とシルナが首を縦に振れば、すぐにでもこの新聞記事は事実となる。

つまり、あいつらは本気なのだ。

今は反対していても、いずれは俺達が屈すると分かっている。

いや…違うな。

最終的には、どんな手段を使っても、この新聞記事を真実にするつもりなのだ。

「シルナ…これ…」

「…うん…」

シルナも、さすがに青ざめていた。

まさか、ここまでやるとは思ってなかった。

ジュリス達が、この新聞記事を届けてくれなかったら…どうなっていたことか。

青ざめている俺達とは対照的に。

ジュリスは、ホッとした様子だった。

「…良かったよ」

「え…?」

この状況で、何が良かったと…。

「お前達が本気で、キルディリアに寝返ったんじゃないって分かったから」

「…それは…有り得ないよ」

「そうだよな。信じてはいたけど…。どうやらその様子じゃ、洗脳されてる訳でもなさそうだしな」

洗脳だって。

怖いこと言わないでくれ。あいつらならやりかねない。

「…それで、ジュリス君とベリクリーデちゃんは」

何とか冷静さを取り戻したシルナが、今度はジュリスに尋ねた。

「君達は、どうしてここに…キルディリア魔王国にいるの?」

…そうだ。それも聞かなければ。

新聞記事のインパクトが強過ぎて、危うく忘れるところだった。

「シュニィちゃんの指示?フユリ様の命令、とか…?」

「あー…。えーと…。…それは…まぁ、色々あってな…」

…何で言い淀むんだ?

目が泳いでるぞ、ジュリス。

「あのね、クロティルダを探しに来たんだよ」

ジュリスの代わりに、ベリクリーデがそう答えた。

は?クロティルダ?

「…誰?」

「昔の私のすっごく大事な人」

ますます、誰?

「まぁ良いじゃないか、そんなことは」

ジュリスが強引に、話を終わらせようとした。

「俺達のことは気にするな。イシュメル女王とやらも、さすがに俺とベリクリーデのことまではノータッチだろう」

「ジュリス…だけど…」

「それでお前ら、これからどうするつもりだ?」

「…」

改めて、ジュリスにそう聞かれ。

俺は言葉に窮してしまった。だけど…。

「帰らなきゃいけない。ルーデュニア聖王国に」

そんな俺の代わりに、シルナがきっぱりと、俺達の示す答えを口にした。

「このまま、イシュメル女王の手練手管に乗せられる訳にはいかない。何としても、私達はルーデュニア聖王国に帰る」

「…シルナ…」

そうだな。その通りだ。

キルディリア魔王国の上級魔導師になんて、なりたくない。

何としても俺達は、あの居心地の良い居場所に帰るのだ。