神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「…シルナ…」

「…うん」

さすがに、シルナも暗い顔だった。

ルーデュニア聖王国を人質に取られると、俺としても自由に動けない。

だからこそ、今、俺達はこの国に留め置かれているのだ。

「あんた…それは卑怯だろ。俺とシルナが亡命するかどうかと、ルーデュニア聖王国に戦争を仕掛けることと、どう関係があるんだ」

「我々としても、手荒な真似はしたくないのです」

絶賛戦争中の国が、何言ってるんだ?

「我々はただ、アーリヤット皇国撃滅の目的の為、そしてこれ以上魔導師達が迫害されることのない国を作る為に、あなた方に協力して欲しいのです」

「そのやり方が間違ってるって言ってるんだよ。魔導師が迫害されない為なら、非魔導師を迫害しても良いって言うのか?」

それじゃ、いじめられたくないが為に、いじめる側に回るのと同じじゃないか。

その憎しみの連鎖が、更なる悲劇を生み出すんだってことが分からないのか。

「ですから、その為に魔導師は…」

と、サクメが言いかけたその時。

「サクメ様!」

「どうした」

客室に、顔を真っ青にした王城兵の一人が飛び込んできた。

な、何事だ?

「ここはシルナ様と羽久様のお部屋だ。勝手に入るなど無礼だろう」

いや、別に俺達、大したもんじゃないから。

普通に入ってきてくれて大丈夫だぞ。

「も、申し訳ございません。で、ですが…」

「何だ?」

「それが…その…」

その王城兵は、サクメの耳元で何やら伝えた。

あまりに小さな声で、俺には聞こえなかったが。

それを聞くなり、サクメの表情が一変したので。

何か、大変なことが起きたのだということは分かった。

「何だと…!?見張りは何をしていた?」

「そ、それが…気絶させられていて…」

き、気絶?

何だか不穏な言葉が聞こえたが。

「ちっ…。仕方ない、俺が出る」

…?

サクメは、くるりとこちらを向いた。

「お騒がせしてしまい、申し訳ありません」

「いや…。別に良いけど、何なんだ?一体」

「いえ、お二人が気にするようなことではありませんから」

何だよ。目の前でそんな思わせぶりなこと言われたら、気になるだろ。

「くれぐれも、しばらく部屋を出ないようにお願いします」

「は、はぁ…」

「それでは、失礼致します」

部屋から出るな、と念を押してから。

シディ・サクメは、危機を伝えに来た王城兵と共に、客室から出ていった。

…何だったんだ?

「シルナ…。…どうしたんだろう?あいつら、いきなり…」

「さぁ…?」

二人で、首を傾げていた。




…その時だった。

「おい、本当にここなのか…!?」

「うーん、多分そう…。…あ、ほら。着いたー」

「ちょ、そんな迂闊に…!…あっ」

客室の、使われていないアンティークな暖炉の中から。

めちゃくちゃ見覚えのある人物が二人、ススまみれで現れた。