神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

手当は、無事完了したが。

「…あ」

「?どうしたの、ジュリス」

「…折角買ってきたアイスティー…」

今更思い出した。

俺、アイスティーをクソガキ共にぶち撒けてしまったんだ。

頭に血が上ってたから、無意識にやってしまったけど。

…よくよく考えたら、あれ、ベリーシュのアイスティーだったのでは?

「…ごめん、ベリーシュ…。お前のアイスティー、ぶち撒けちゃった…」

「あ、あー…。…そっか…」

「ほんとごめん…。これ…レモンで良ければ、俺のあげるから…」

ベリーシュはストレートのアイスティーが良かったんだよな?ごめん。

しかも、俺のアイスレモンティーも、さっきまでの騒動ですっかり氷が溶け、ぬるくなってしまっている。

「いや、別に気にしなくて良いよ。ありがとう」

「ごめん…。…もう一回買ってこようか?」

「本当に大丈夫だから。気にしないで」

笑って許してくれるベリーシュの優しさが、むしろ俺の罪悪感を駆り立てる。

…はぁ。

まさか、青カードを持っているってだけで、通りすがりのクソガキに石を投げられるとは…。

…有り得ないだろ。この国。

「…ごめんな、ベリーシュ」

「?気にしてないから、もう謝らなくて良いってば」

「いや…そうじゃなくてさ」

さっきの騒動…も、そうだけど。

それだけじゃない。

この国に来てから、今に至るまでに起きたこと、全部。

裏を返せば、それは俺の浅慮が招いたことだ。

「お前は…本当は魔導師なのに…」

本当ならベリーシュだって、俺と同じ、オレンジ色の証明書を発行してもらえる立場だった。

ベリクリーデもベリーシュも、れっきとした魔導師なんだから。

それなのに…。俺が下らない浅知恵を巡らせたばかりに。

この国で、非魔導師の烙印を押されるというのがどういうことか、俺はまるで分かっていなかった。

こうなると分かっていれば…。

本当に魔導師じゃなくて、魔導適性がなくて青カードを持ってるなら、まだ諦めもつくかもしれない。

だけどベリーシュは本来、こんな扱いを受ける立場じゃないのだ。

本当は魔導師なのだ。俺と同じ…。

「俺のせいで…ずっと酷い目に」

「…そんなこと気にしてないよ。ジュリス」

そうだお前のせいだ、と責めることだって出来るはずなのに。

むしろ、ベリーシュはそうするべきなのだ。

それなのに。

「私も、ベリクリーデも。ジュリスのせいだなんて思ってない」

「…だけど…」

「国境検問所でのことは、私もベリクリーデの中で見てたよ」

…え。

「だから、あの状況でジュリスが何を考えて、ベリクリーデのことを魔導師じゃないって言ったのか、分かってる。…ベリクリーデじゃ、簡単な魔法は使えない、って思ったんだよね?」

「あ…。あぁ。…それどころか、うっかり国境検問所ごと吹き飛ばすかと…」

「うん、私もそう思う。ベリクリーデならやりかねない」

謎の説得力。

俺もお前も、ベリクリーデの魔法の大雑把さは、嫌と言うほど知ってるからな。