神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

あのな。俺はずっと、この国の魔導師達に聞きたかったんだが。

「…なぁ、あんた。これがもし、自分の家族だったら」

「はぁ?」

俺は、銀色の証明書をぶら下げたその店員に、ずっと疑問に思っていたことをぶつけた。

「こんな差別的な扱いを受けてるのが、もし自分の家族だったら、あんた、同じことが言えるか?」

自分の大切な人が、非魔導師だったら。青カード持ちだったら。

ただ魔法が使えないってだけで、こんな酷い扱いを受けてたら。

許せない、理不尽だ、って思うのが当然だろう?…今の俺のように。

…しかし。

「…?家族だろうと何だろうと、仕方ないじゃないですか。だって魔導師じゃないんだから」

「…」

魔導師じゃないのが悪い、と?

どんなに酷い扱いを受けたって、それはその人に魔導適性がないのが悪いのであって。

自分達が、いかに惨いことをしているのか全然分かっていない。

むしろ、それを当たり前のことだと思っている…。

…あぁ、そうかい。

それが、この国の当たり前の価値観なんだな。

…クソ喰らえだ、そんなもの。

「…あぁ、もう良い。問答してる時間が惜しい」

「…はぁ…」

「じゃ、もう店の中に座らせろとは言わない。…ここ、テイクアウトは出来るよな?」

店の出入り口に、非魔導師お断り、のステッカーの横に。

テイクアウト可能、のステッカーも貼ってあった。

「はい、可能ですが…」

「なら、アイスティーを二つ。俺はレモンで…。…ベリーシュ、レモンとミルクどっちにする?」

「そのまま、ストレートが良いかな」

「それじゃ、もう一つはストレートで」

「はぁ、かしこまりました…」

店の外で飲むなら良いだろ。畜生めが。

店内でブチギレなかった俺に感謝しろ。

「少々お待ち下さい」

「あぁ」

さっさとしてくれ。俺はもう、さっさとこの店から出たい。

「…ジュリス、私、外で待ってるね」

ベリーシュが俺に、こっそりと小声で告げた。

別に、店の中で一緒に待ってりゃ良いじゃん、と思ったが。

頭に血を上らせている俺と違って。

ベリーシュは、さっきから店内の別の客達が、ちらちらとこちらを見ていることに気づいていた。

俺達が店の入り口で揉めてるから、気になったのだろう。

そしてその客の中には、露骨に顔をしかめる者もいた。

…ベリーシュが首から下げている証明書が青いことに、気づいていたんだろう。

『青カード』が、何やらぐずぐずと揉めている、と思ったんだろうな。

見世物じゃねぇんだぞ。

ベリーシュはこれ以上の揉め事を避けようと、自らが身を引くことで、この場を穏便に切り抜けようとした。

…俺よりよっぽど大人だよ。ベリーシュは。

「…分かった。すぐ持って行くから」

「うん、ありがとう」

ベリーシュは一人で、先に店を出た。

しかし、これがまた間違いだった。