神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

腰を下ろせそうな喫茶店は、確かにいくつもあった。

大通りでは、お洒落なオープンテラスのカフェで、飲み物を楽しんでいる人々の姿が見られた。

だけど、そういう店は軒並み、入店を断られた。

店に入ると、まず、魔導師証明書の提示を求められ。

俺の持つオレンジ色の証明書だと、何の問題もなく歓迎される。

でも、その次にベリーシュの証明書を見せると…。

非魔導師であることを示す、その青いカードを見ると、店員は露骨に顔をしかめ。

青カードは入店出来ません、と門前払い。

でもな、そのくらいなら、まだマシ。

ハナから店の看板に、『青カード入店お断り』のステッカーを貼っている店も、多々見受けられた。

人種差別も甚だしい。

そのステッカー、引っ剥がして、そして引き千切ってやりたかった。




「…あー…。…申し訳ありません、お客様。当店は、『青カード』は立ち入りを禁止しているんです」

これで、もう何軒目か。

俺達はただ、腰を下ろして、ゆっくり飲み物でも飲みたいだけなのに。

ベリーシュの青い証明書を見せるなり、こうして入店を拒否される。

…さすがの俺も、爆発寸前。

「…何で駄目なんだよ?」

納得が行かなくて、俺は抗議した。

「何でと言われましても…。…当店は魔導師のお客様専用となっておりまして…」

「別に良いだろ。そいつと同じ席に座る訳じゃないんだから」

「ですが…。『青カード』が入店しているのを見ると、気分を害するお客様がいらっしゃるので…」

首から下げてるカードの色が違うだけで、気分を害するってのか?

意味不明。

別に、大騒ぎしたり、無銭飲食しようって訳じゃない。

それなのに…。

「とにかく、当店では無理ですから。オレンジカードのお客様だけでしたら、歓迎しますが」

「俺だけ入ってどうすんだよ。ふざけんな」

俺が優雅に座って紅茶を啜ってる間。

ベリーシュは、店の外で待ちぼうけってか?

ふざけたことばっか言いやがって。いい加減ぶん殴ってやろうか、この差別主義者共め。

「じゃ、何処に行けば良いんだよ?」

「そう申されましても…」

「…ジュリス、もう良いよ」

ベリーシュが、またしても。

興奮する俺に、小声でそう制した。

「私は大丈夫だから。気にしないで。外で待ってるから、ジュリスだけで…」

「馬鹿、ふざけんな。お前だけ残していける訳ないだろ」

ただでさえ、ベリーシュだけ別のホテルに泊まらせたり。

列車でも、ベリーシュだけ劣悪な3等車に乗せて、俺は優雅に2等車に乗って。

俺の中では、既に耐え難いレベルの鬱憤が溜まっている。

この上、ベリーシュだけ外で待たせて、俺だけ腰を下ろしてゆっくりティータイム、なんて。

それなら、一緒に外で水でも飲んでる方がマシだよ。

しかし、俺の目の前にいる頭の固い店員は。
 
俺が一体何に怒ってるのか分からないようで、首を傾げていた。

「おかしなこと言う客だなぁ」とでも思ってるんだろうか。

…おかしいのは、あんたの方だよ。