これが普通の旅行だったならば。
いや…違うな。
もし、ベリクリーデが一緒に同じホテルに泊まっていたならば。
しきりに感心して、しばらくキルディリア魔王国でバックパッカーでもしようかな、と真剣に考えただろうに。
俺がこうして、呑気に焼きたてクロワッサンを食べている間に。
ベリクリーデはどうしているだろう、と考えると。
クロワッサンの味も、ろくに分からねぇよ。
折角贅沢なホテルなのに、全然楽しめない。
当然だ。
それもこれも、こんな贅沢なサービスを受けられるのは、俺が金を払った宿泊客だから、ではない。
俺が、この忌々しいオレンジ色のカードを持っているからだ。
それだけが理由なのだ。
いくら金を払っていても、青いカードを持っていたら、こんな扱いは受けられない。
そう思うと、とてもじゃないけど楽しむ気にはなれなかった。
それよりも、早くチェックアウトの時間になってくれ、と心から祈っていた。
一刻も早く、ベリクリーデに会いに行きたかった。
…チェックアウトの時間を、今か今かと待ち続け。
さっさと金を払って、俺は逃げるようにホテルを出た。
向かったのは、ベリクリーデが泊まっている、寂れた青カード客専用のモーテル。
そのモーテルの入り口付近で、ベリクリーデは既に待っていた。
スーツケースに軽く腰掛けていた。
彼女の姿を遠目に見つけるなり、俺はスーツケースを引き摺るようにして、駆け足で走った。
「ベリクリーデ…!」
「あ、ジュリス…。…おはよう」
「…」
遠目だと気づかなかった。
だけど、こうして近づいてみて。
そこにいるのが、ベリクリーデじゃないことに気づいた。
見た目は、確かにベリクリーデなんだけど。
中身は別物に変わっている。
「お前…。…ベリーシュだな」
「うん、そう」
やっぱり。
そこにいたのは、ベリクリーデではなく。
ベリクリーデの中にいる、ベリーシュ・クルークスという別人格だった。
「ごめんね、私が出てきちゃって…」
「いや…。それは別に良いけど」
ベリーシュだって、ずっとその身体の中に引っ込んでたら、窮屈だろう。
たまには出てきて良いんだぞ。お前はベリクリーデと違って、話が通じるし。
…でも、今は…正直…。
…ベリクリーデじゃなかったことに、少し落胆している自分がいた。
ずっと心配してたもんだから…ベリクリーデのことを。
俺の落胆が、顔に出ていたのだろう。
ベリーシュは少し困った顔をして、
「本当にごめんね。君がベリクリーデに会いたかったことは分かってるんだけど」
「あ、いや…ごめん、そんなつもりじゃ…」
これじゃまるで、ベリーシュに対して「何でお前が出てきたんだよ」と責めてるみたいじゃないか。
ベリーシュは何も悪くないのに。
むしろ…ベリーシュは、ベリクリーデを助けてくれていたのだ。
いや…違うな。
もし、ベリクリーデが一緒に同じホテルに泊まっていたならば。
しきりに感心して、しばらくキルディリア魔王国でバックパッカーでもしようかな、と真剣に考えただろうに。
俺がこうして、呑気に焼きたてクロワッサンを食べている間に。
ベリクリーデはどうしているだろう、と考えると。
クロワッサンの味も、ろくに分からねぇよ。
折角贅沢なホテルなのに、全然楽しめない。
当然だ。
それもこれも、こんな贅沢なサービスを受けられるのは、俺が金を払った宿泊客だから、ではない。
俺が、この忌々しいオレンジ色のカードを持っているからだ。
それだけが理由なのだ。
いくら金を払っていても、青いカードを持っていたら、こんな扱いは受けられない。
そう思うと、とてもじゃないけど楽しむ気にはなれなかった。
それよりも、早くチェックアウトの時間になってくれ、と心から祈っていた。
一刻も早く、ベリクリーデに会いに行きたかった。
…チェックアウトの時間を、今か今かと待ち続け。
さっさと金を払って、俺は逃げるようにホテルを出た。
向かったのは、ベリクリーデが泊まっている、寂れた青カード客専用のモーテル。
そのモーテルの入り口付近で、ベリクリーデは既に待っていた。
スーツケースに軽く腰掛けていた。
彼女の姿を遠目に見つけるなり、俺はスーツケースを引き摺るようにして、駆け足で走った。
「ベリクリーデ…!」
「あ、ジュリス…。…おはよう」
「…」
遠目だと気づかなかった。
だけど、こうして近づいてみて。
そこにいるのが、ベリクリーデじゃないことに気づいた。
見た目は、確かにベリクリーデなんだけど。
中身は別物に変わっている。
「お前…。…ベリーシュだな」
「うん、そう」
やっぱり。
そこにいたのは、ベリクリーデではなく。
ベリクリーデの中にいる、ベリーシュ・クルークスという別人格だった。
「ごめんね、私が出てきちゃって…」
「いや…。それは別に良いけど」
ベリーシュだって、ずっとその身体の中に引っ込んでたら、窮屈だろう。
たまには出てきて良いんだぞ。お前はベリクリーデと違って、話が通じるし。
…でも、今は…正直…。
…ベリクリーデじゃなかったことに、少し落胆している自分がいた。
ずっと心配してたもんだから…ベリクリーデのことを。
俺の落胆が、顔に出ていたのだろう。
ベリーシュは少し困った顔をして、
「本当にごめんね。君がベリクリーデに会いたかったことは分かってるんだけど」
「あ、いや…ごめん、そんなつもりじゃ…」
これじゃまるで、ベリーシュに対して「何でお前が出てきたんだよ」と責めてるみたいじゃないか。
ベリーシュは何も悪くないのに。
むしろ…ベリーシュは、ベリクリーデを助けてくれていたのだ。


