神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

今更になって、俺は自分の判断に激しく後悔した。

やっぱり無理にでも、ベリクリーデに魔法を使わせて。

ベリクリーデもオレンジカードをもらっていれば、こんなことには…。

…だが。

何度考え直しても、あの時はあれが最善の判断だった。

そう思うしかなかった。

だって、まさか証明書の色によって泊まるホテルが違うなんて、誰も思わないだろ。

…こうなったら。

「ベリクリーデの証明書でも泊まれるホテルに行こう」

あのホテルマン、安いボロホテルにでも泊まれ、って言ってたよな?

ってことは、ちゃんと青カードでも泊まれるホテルが、何処かにあるのだ。

この際、ホテルのグレードなんてどうでも良い。

「もう少し頑張れるか、ベリクリーデ」

「うん。大丈夫」

強がってはいるけれど、ベリクリーデも多分、相当疲れているはずだ。

早く、今夜の宿を見つけなくては…。

俺達はしばらく、出来るだけ人気(ひとけ)の少ない方に、少ない方に歩いていった。

すると、ようやく。

外壁がところどころ剥がれ、掠れた小さな看板が立っているだけの、小さなモーテルを見つけた。

…ここなら。

「あのー…。すみません」

そっと玄関から入っていくと、フロントには、やる気がなさそうに頬杖をついたフロント係が座っていた。

「あぁ、どうも…」

「あの…二人なんだけど、部屋は空いて…」

「はいはい。部屋ならいくつでも…。…え?」

え?

フロント係は、びっくりして俺を見つめていた。

…俺を、と言うか…俺の首にかけた証明書を。

それがオレンジ色をしていることに気づいて、フロント係は飛び上がった。

そして、慌てて姿勢を直すではないか。

「これは、大変失礼致しました。魔導師のお客様ですね」

「…まぁ、そうだけど」

「本当に申し訳ございません。てっきり、『青カード』だとばかり…」

「…」

『青カード』だったら、あんな横柄な態度を取っても許される、と?

冗談じゃねぇ。

「でも…魔導師のお客様が、どうしてこんな宿に…?」

「こんな」って、自分のところのモーテルだろうよ。

「…俺はこの通りオレンジのカードだが、連れは青いカードなんでね」

「あぁ…。…そういうことですか」

やれやれ、みたいな顔。

…何だよ。なんか悪いのか。

「俺はただ…二人で泊まれる場所を探してるだけなんだけどな」

俺は、至って当たり前のことを言っただけなのに。

「あー…。…それは難しいですねぇ」

フロント係は、半ば呆れたようにそう言った。