実際、ホテルはたくさんあった。
10メートル先にホテル。その15メートル向かい側にまたホテル。
あちこちにホテルが建っていて、俺は片っ端から、それらのホテルに入っては、空室がないかどうか尋ねたのだが…。
「…あのー…。2人なんですけど、部屋、空いてます?」
これで何軒目だろうか。
スーツケースを引き摺りながら、俺はホテルのロビーに足を踏み入れた。
そこのフロントで、今度こそ空き室がないか聞いてみたところ…。
「はい。魔導師証明書はお持ちですか?」
「え?あぁ…。これです」
俺は、さっきもらったばかりのオレンジ色のカードを見せた。
「では、お連れ様は?」
「ベリクリーデ」
「ん」
ベリクリーデは、首に下げた青色のカードを掲げて見せた。
するとその瞬間、フロント係は眉をひそめ。
「…申し訳ありませんが、本日はもう満室です」
素っ気なく、そう言った。
「あ、そうですか…。…どうしても無理ですか?」
「えぇ、無理です」
「…ふーん…」
仕方がない。ここも駄目か。
俺はそれ以上食い下がることはせず、スーツケースを持って、渋々ホテルを出た。
ベリクリーデは、そんな俺の後ろを追ってきた。
「…ジュリス…」
「…ごめんな、なかなか部屋、見つけられなくて」
「ううん」
ベリクリーデは首を横に振った。
…さすがにおかしいんじゃないかって、思い始めてきた。
さっきのホテルも、その前に訪ねたホテルも、その前も、満室だからって言われて追い出されたが。
…本当に満室なのか?
さっきのホテルさ、俺が「部屋は空いてるか」と聞いた時。
まず、魔導師証明書の提示を求めたよな?
で、俺とベリクリーデの証明書をそれぞれ確かめてから、「満室です」って断ってきた…。
これっておかしくないか?
もし本当に満室なんだったら、「部屋は空いてるか」って聞かれた時に、すぐ「満室です」って答えるのでは?
何で、いちいち先に魔導師証明書の提示を求めるんだ?
さっきのホテルだけじゃなくて、その前も、その前のホテルもそうだったのだ。
まるで、証明書を見てから返事をしているような…。
いや、まさかそんな…。
「…」
「…?ジュリス、どうしたの?」
「…いや…」
…よし。それじゃはっきりさせようじゃないか。
俺は周囲をきょろきょろと見渡し。
また別のホテルを見つけて、今度はそこで実験してみることにした。
フロントに近づくと、にこやかな若い男性ホテルマンが迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました」
「二人なんだけど、部屋はまだあるか?」
「かしこまりました。…では、まず魔導師証明書をお見せいただけますか」
ほら、また。
部屋に空きがあるかどうかより先に、証明書を見せろと言ってきた。
まるで、マニュアルでそう決まっているかのように。
10メートル先にホテル。その15メートル向かい側にまたホテル。
あちこちにホテルが建っていて、俺は片っ端から、それらのホテルに入っては、空室がないかどうか尋ねたのだが…。
「…あのー…。2人なんですけど、部屋、空いてます?」
これで何軒目だろうか。
スーツケースを引き摺りながら、俺はホテルのロビーに足を踏み入れた。
そこのフロントで、今度こそ空き室がないか聞いてみたところ…。
「はい。魔導師証明書はお持ちですか?」
「え?あぁ…。これです」
俺は、さっきもらったばかりのオレンジ色のカードを見せた。
「では、お連れ様は?」
「ベリクリーデ」
「ん」
ベリクリーデは、首に下げた青色のカードを掲げて見せた。
するとその瞬間、フロント係は眉をひそめ。
「…申し訳ありませんが、本日はもう満室です」
素っ気なく、そう言った。
「あ、そうですか…。…どうしても無理ですか?」
「えぇ、無理です」
「…ふーん…」
仕方がない。ここも駄目か。
俺はそれ以上食い下がることはせず、スーツケースを持って、渋々ホテルを出た。
ベリクリーデは、そんな俺の後ろを追ってきた。
「…ジュリス…」
「…ごめんな、なかなか部屋、見つけられなくて」
「ううん」
ベリクリーデは首を横に振った。
…さすがにおかしいんじゃないかって、思い始めてきた。
さっきのホテルも、その前に訪ねたホテルも、その前も、満室だからって言われて追い出されたが。
…本当に満室なのか?
さっきのホテルさ、俺が「部屋は空いてるか」と聞いた時。
まず、魔導師証明書の提示を求めたよな?
で、俺とベリクリーデの証明書をそれぞれ確かめてから、「満室です」って断ってきた…。
これっておかしくないか?
もし本当に満室なんだったら、「部屋は空いてるか」って聞かれた時に、すぐ「満室です」って答えるのでは?
何で、いちいち先に魔導師証明書の提示を求めるんだ?
さっきのホテルだけじゃなくて、その前も、その前のホテルもそうだったのだ。
まるで、証明書を見てから返事をしているような…。
いや、まさかそんな…。
「…」
「…?ジュリス、どうしたの?」
「…いや…」
…よし。それじゃはっきりさせようじゃないか。
俺は周囲をきょろきょろと見渡し。
また別のホテルを見つけて、今度はそこで実験してみることにした。
フロントに近づくと、にこやかな若い男性ホテルマンが迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました」
「二人なんだけど、部屋はまだあるか?」
「かしこまりました。…では、まず魔導師証明書をお見せいただけますか」
ほら、また。
部屋に空きがあるかどうかより先に、証明書を見せろと言ってきた。
まるで、マニュアルでそう決まっているかのように。


