神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

ようやく、証明書が発行されたので。

晴れて、キルディリア魔王国に入国。

いやはや、長かった。

さて、まずはベリクリーデと合流して…。

…と、思っていたら。

「おっ…ベリクリーデ」

「…!」

国境検問所の入り口を出たところに、ベリクリーデは地面に直接、旅行鞄を置き。

それを椅子代わりに、一人で腰掛けていた。

俺の姿を見るなり、ベリクリーデはしゅばっ、と立ち上がって駆け寄ってきた。

ベリクリーデは、首に青色のカードをぶら下げてた。

あ、あれが非魔導師の証明書なのか…。

…って。

「うわっ…ちょ、何だよ…?」

「…」

ベリクリーデは駆け寄ってきた勢いのまま、俺にしがみついてきた。

そのまま、ぎゅうう、と俺の上着を握り締める。

何をするんだ、と怒りそうになったが。

そうだ。結局、一時間くらい離れ離れだったんだもんな。

「…大丈夫か?一人ぼっちだったもんな…」

「…」

「もう終わったから。この後はずっと一緒だよ」

「…いっしょ?ほんとに?」

ベリクリーデが、半泣きの顔を上げた。

そ、そんな泣きそうにならなくても…。

「あぁ、本当だよ。大丈夫」

「…」

「だから、安心して…。…とりあえず、休めるようにまずはホテルを探そうぜ」

疲れてるだろ、ベリクリーデも。

すると、ベリクリーデはようやく、一歩、二歩と下がって、離れてくれた。

…ふぅ。

ベリクリーデは、珍しく疲れたような顔をしていた。

と言うか、多分船酔いのせいだと思われる。

「疲れただろ、ベリクリーデ」

「…うん…」

「さっき、何か飲み物もらったか?オレンジジュースとか…」

「…??ジュース?」

あれ?

「証明書の発行を待ってる間…。…待ち合い室で待たされただろ?」

「うん…」

「そこで、飲み物サービスしてもらわなかったか?」

俺、とびっきり高級なアールグレイをご馳走になったんだけど。

ベリクリーデもきっと、ジュースか何かもらってるとばかり、

しかし。

「…?何もなかったよ」

「えっ…」

「狭い部屋の中で、他にも持ってる人がいっぱいいて…。座るところなかったから、バッグに座ってたの」

「…」

…何で?

俺が案内された待ち合い室は、広々としていて、ソファもテーブルもあって…。

高級アールグレイティーから、ワインまで、様々な飲み物をサービスしてもらって…。おまけにクッキーまでもらったのに。

ベリクリーデは、飲み物どころか、まともに座るところもなかったと。

「この青いカード、もらったらすぐに追い出されて…」

「…」

「ジュリスが戻って来るまで、建物の中で待ってようと思ったんだけど、用がないなら出ていけって…。中の人に言われて」

「…それで、外で待ってたのか?」

「…ん」

…ちょっと、さっきの国境検問所の職員。

表に出ろ。一発ぶん殴ってやる。

それにしても意味が分からない。俺は至れり尽くせりだったのに。

何で、ベリクリーデはこんな扱いを…。