神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

あまりの突然の豹変に、俺は思わずびっくりして、度肝を抜かれた。

そ…そんなに必要なものなのか?魔導師証明書、って…。

まさか、悪意を持ってこの国に入国しようと企んでいる、と誤解されているのか。

冗談じゃない。

「あ、あの…すみません、俺達、その魔導師証明書…?っていうのが何なのか、知らなくて…」

ここは、正直に白状する。

ベリクリーデじゃないが、素直が一番だ。

「必要なものなんですか?」

「魔導師証明書を持たずに、この国に一歩たりとも入国することは出来ません」

「…」

…そりゃ、「必要」どころか。

「必要不可欠」だな。

「何処に行けばもらえるんですか?」

「あなたは魔導師ですか?それとも、非魔導師ですか」

えっ、何その質問。

キルディリア魔王国は魔導師国家であり、非魔導師には厳しい国だと聞いていたが。

まさか、旅行客にまでそうとは思わなかった。

「俺達、二人共魔導師です」

何も疚しいことなんてないし、これが事実である。

だから、俺は毅然としてそう答えた。

しかし。

「では、この場でそのことを証明してもらえますか」

し…証明?

「この場で、簡単な魔法で結構ですので、魔法を使ってみせてください」

「…」

「本当に魔導師なら、出来ますよね?」

…こいつ、疑ってるのか?

あまりの慇懃無礼な態度に、さすがの俺もちょっと不機嫌になった。

あぁそうか。お望みなら見せてやるよ。

俺は杖を取り出して、魔法を発動してみせた。

「…dinw」

小さな風魔法だ。

俺の杖の先に、ふわっと風が吹き。

女性審査官の前髪が、はらりと揺れた。

途端に、彼女の顔は再び、柔らかな笑顔に戻った。

「確かに、拝見しました」

「…これで良いのかよ?」

「はい、結構です。ありがとうございます」

あ、そう。それはどうも。

…すると。

「…では、次はお連れ様の番です」

それはそれとして、とばかりに。

女性審査官は、ベリクリーデに厳しい眼差しを向けた。

「ふぇ?」

「魔法を使ってみせてください」

「…魔法…」

突然そう頼まれて、ベリクリーデは戸惑ったような、困ったような表情を見せた。

「ちょ…ちょっと待てよ。魔法なら、さっき俺が見せただろ?」

これで結構だって、あんた、さっき言ったじゃないか。

しかし、女性審査官は、それでは納得しなかった。

「はい。あなたは先程魔法を見せてもらいましたが、お連れ様はまだ見せてもらっていません」

「…な…」

俺が使って見せたんだから、ベリクリーデも良しってことにしてくれよ。

あぁもう、このお役所主義。