神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

ベリクリーデに違和感を感じたのは、ようやく船がキルディリア魔王国に到着してからである。

「はぁ…。…やっと着いた」

「…」

ようやく、陸の上に立ったぞ。何だか凄く長かったように感じる。

船酔いのせいだな。間違いなく。

これ、帰りも乗らなきゃいけないんだよな…。…気が滅入るよ。

でも、帰りはクロティルダが一緒だからな。

クロティルダの天使パワー(?)で、ひとっ飛びに連れて帰ってもらおう。そうしよう。

「…さて、ベリクリーデ。港に着いたら、すぐに入国審査だ」

「…」

「あの列に並べば良いんだろうな。よし、行くぞ」

「…」

「…ベリクリーデ?」

船の中ではあんなに饒舌だったのに。

船が港に着くなり、ベリクリーデは黙り込んでしまっていた。

振り向くと、ベリクリーデは真っ青な顔をしていた。

「お、おい…!大丈夫か?」

「…」

何なんだ?何で何も言わないんだ?

まさか、この国に辿り着いた途端に、また何か変な気配を感じて、

「ベリクリーデ、どうした?何があっ、」

「…ふぇへっ」

「うわっ!大丈夫か!?」

ベリクリーデはスーツケースを手にしたまま、その場にコケッ、と転びかけた。

あぶなっ。

俺は咄嗟にベリクリーデの身体を抱き締め、何とか転倒は防いだ。

しかし、ベリクリーデはぐるぐると目を回していた。

ほ、本当に何なんだ…!?

「どうしたんだよ、ベリクリーデ。何が…!」

「…ふぇ〜…」

駄目だ。目がぐるぐる回ってるみたいで、目の焦点が合ってない。

これは…一体。

「ほら、しゃんと立て。転ぶんじゃない」

スーツケース持ってやるから。

「足元が…」

「は?」

「足元が…ぐらぐらするよ〜…」

「…」

「…右にゆらゆら〜…。左にゆらゆら〜…」

…何これ。船酔い?

…船から降りたのに?

あれか。ほら、エレベーターとか降りた直後ってさ。

床にしっかり足を着けてるはずなのに、足元がふわふわするように感じることって、ない?

あんな感じでさ。

今更、遅効性のように船酔いが襲い掛かってきたとでも?

「ベリクリーデ…。…お前、船酔いか?」

「…酔っ払ってないよ?…お酒、飲んでないもん」

「俺だって飲んでねぇよ…。そうじゃなくて、船酔い」

「…??」

こいつ、船酔いを知らないのか。

「船の中で、頭がふらふらしたり、吐き気を感じることって、なかったか?」

「…?あったよ?」

やっぱり船酔いじゃん。

なんてことだ。

馬鹿は船酔いにならないのかと思ってたら、全然そんなことはなかったらしい。