神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「…」

俺は、じっとベリクリーデを見つめた。

…見た目には、まったく変化は見られないが…。

「…お前、ベリーシュ…じゃ、ないよな?」

「…?私はベリクリーデだよ?」

「…だよな」

違うよな。ベリーシュとは、気配が違う…。

ってことは、ちゃんとベリクリーデなのだ。

ベリクリーデが、「キルディリア魔王国に行く」と言っているのだ。

何を馬鹿なこと言ってんだ、と説教したりはしなかった。

だって、ベリクリーデが素直に俺の言うことを聞かないってことは。

それなりの理由があるのだ。…ベリクリーデが、どうしてもそう主張する理由が。

「…そこに何があるんだ?キルディリア魔王国に…」 

「…んー…」

「分からないか?」

「…クロティルダを探しに行くの」

「…!」

…クロティルダ、だと?

「クロティルダ…。あのアホ天使、キルディリア魔王国にいるのか?」

「うん。…。…うん?…分かんない…」

ベリクリーデは、こてんと首を傾げた。

「でも、クロティルダがいる気がするの」

「…そうか…」

普通、「〜の気がするから」なんて不確かな理由で、戦時中の国に飛び込んだりしない。

だけど、ベリクリーデの直感がいつだって「本物」であることを、俺は長い付き合いで、よく知っている。

それに、あの天使とのことは、俺よりベリクリーデの方が詳しいに決まってるからな。

ベリクリーデがそう言うんなら、そうなんだろう。

…多分。

「だから、私、キルディリアに行く。クロティルダを探しに行く」

「…」

「…ジュリス、怒ってる?」

ベリクリーデは、心配そうに尋ねてきた。

「いや…。別に、怒っちゃいないけど…」

それよりも、俺は考えていたのだ。

どうやって、ベリクリーデが安全にキルディリア魔王国に行くことが出来るか、って。

…その答えは決まっている。

「…分かった。キルディリア魔王国に行くんだな」

「うん」

「それじゃ、俺も一緒に行くよ」

「…え」

これが、唯一ベリクリーデの安全を守る手段だ。