イレースに促され、シルナは覚悟を決めて話し始めた。
「あの時私は、キルディリア魔王国の代表から直々に、キルディリアに来てくれって招待されたんだ」
「何の為に?」
「それが…キルディリアが国を挙げて、新しい魔導師養成学校を作ることになって…。それに当たって、イーニシュフェルト魔導学院の学院長である私を参考人として、意見や助言を聞きたいからって…」
こう言っちゃ、自慢話になってしまうが。
イーニシュフェルト魔導学院は、これでも世界的に有名な魔導師養成校の一つなのだ。
そこで、自分の国に新しい魔導師養成学校を作るので、是非とも学校経営のノウハウを教えて欲しい、と。
イーニシュフェルト魔導学院の学院長であるシルナに、お呼びがかかったという訳だ。
…ここまでは、まぁ不自然な話ではない。
しかし、この時点でイレースは、眉をひそめていた。
「ふん…。自分の国の学院の在り方を、他国の人間の意見に委ねるとは。情けない」
…まぁ、気持ちは分かる。
ルーデュニア聖王国内のことならともかく、他所の国のことまで知らねーよ。
と、思う気持ちは、確かに俺にもあった。
…しかし、シルナはそうじゃなかった。
「でも、お人好しパンダなあなたのことです。どうせ喜び勇んで要請に応じたんでしょう」
「うっ…」
イレース、容赦なく図星をついてくるな…。
「新しい学校を作るからアドバイスして」と言われ、シルナは喜んでいた。
イレースの言う通り、シルナはお人好しだからな。
「自分が役に立てるなら」と、喜んでキルディリア行きを決めた。
あの時点では、まだキルディリアに裏の企みがあることなど、考えてもみなかったのだ。
それどころか、今回のことが、ルーデュニア聖王国とキルディリア魔王国の間に、友好関係を築くきっかけになるかもしれない。
そんな淡い期待も込めて、シルナはキルディリア魔王国に赴いた。
ちなみに、俺は留守番だった。
俺だって行きたかったんだよ、一緒に。でも駄目だった。…さすがに。
あの当時は、今みたいに教員の数が多くなかったからな。
ほとんどの教師がシルナの分身で、生身の教師は俺とシルナの二人だけだった。
シルナに加えて、俺まで一緒に出かけてしまったら。
学院には、シルナの分身教師しかいなくなってしまう。
さすがに一人くらいは生身の教師を残した方が良いということで、俺だけ留守番する羽目になった。
今でも、あの時随分と歯痒い思いをしたのを覚えている。
俺も一緒についていけてたらな…。
そして、シルナは一人で、キルディリア魔王国に向かった。
そこで待ち受けていたのは、新しく作る魔導師養成校…ではなかった。
いや、確かに嘘ではなかった。確かに、キルディリア魔王国は新しい魔導師養成学校を建設しようとしていた。
していた、のだけれど…。
「学院長先生…。そのキルディリア魔王国の新しい学校って、どんなところだったんですか?」
と、天音が尋ねた。
するとシルナは、困ったように肩をすくめて…。
「…それがね、イーニシュフェルト魔導学院と、ほとんど同じだったんだ」
「えっ…」
「…本当に驚いたよ」
シルナは、当時のことを思い出しながらそう言った。
俺も、あの当時のことを思い出していた。
シルナがキルディリア魔王国から帰ってきた時、非常に疲れた表情で語ってくれたことを。
「あの時私は、キルディリア魔王国の代表から直々に、キルディリアに来てくれって招待されたんだ」
「何の為に?」
「それが…キルディリアが国を挙げて、新しい魔導師養成学校を作ることになって…。それに当たって、イーニシュフェルト魔導学院の学院長である私を参考人として、意見や助言を聞きたいからって…」
こう言っちゃ、自慢話になってしまうが。
イーニシュフェルト魔導学院は、これでも世界的に有名な魔導師養成校の一つなのだ。
そこで、自分の国に新しい魔導師養成学校を作るので、是非とも学校経営のノウハウを教えて欲しい、と。
イーニシュフェルト魔導学院の学院長であるシルナに、お呼びがかかったという訳だ。
…ここまでは、まぁ不自然な話ではない。
しかし、この時点でイレースは、眉をひそめていた。
「ふん…。自分の国の学院の在り方を、他国の人間の意見に委ねるとは。情けない」
…まぁ、気持ちは分かる。
ルーデュニア聖王国内のことならともかく、他所の国のことまで知らねーよ。
と、思う気持ちは、確かに俺にもあった。
…しかし、シルナはそうじゃなかった。
「でも、お人好しパンダなあなたのことです。どうせ喜び勇んで要請に応じたんでしょう」
「うっ…」
イレース、容赦なく図星をついてくるな…。
「新しい学校を作るからアドバイスして」と言われ、シルナは喜んでいた。
イレースの言う通り、シルナはお人好しだからな。
「自分が役に立てるなら」と、喜んでキルディリア行きを決めた。
あの時点では、まだキルディリアに裏の企みがあることなど、考えてもみなかったのだ。
それどころか、今回のことが、ルーデュニア聖王国とキルディリア魔王国の間に、友好関係を築くきっかけになるかもしれない。
そんな淡い期待も込めて、シルナはキルディリア魔王国に赴いた。
ちなみに、俺は留守番だった。
俺だって行きたかったんだよ、一緒に。でも駄目だった。…さすがに。
あの当時は、今みたいに教員の数が多くなかったからな。
ほとんどの教師がシルナの分身で、生身の教師は俺とシルナの二人だけだった。
シルナに加えて、俺まで一緒に出かけてしまったら。
学院には、シルナの分身教師しかいなくなってしまう。
さすがに一人くらいは生身の教師を残した方が良いということで、俺だけ留守番する羽目になった。
今でも、あの時随分と歯痒い思いをしたのを覚えている。
俺も一緒についていけてたらな…。
そして、シルナは一人で、キルディリア魔王国に向かった。
そこで待ち受けていたのは、新しく作る魔導師養成校…ではなかった。
いや、確かに嘘ではなかった。確かに、キルディリア魔王国は新しい魔導師養成学校を建設しようとしていた。
していた、のだけれど…。
「学院長先生…。そのキルディリア魔王国の新しい学校って、どんなところだったんですか?」
と、天音が尋ねた。
するとシルナは、困ったように肩をすくめて…。
「…それがね、イーニシュフェルト魔導学院と、ほとんど同じだったんだ」
「えっ…」
「…本当に驚いたよ」
シルナは、当時のことを思い出しながらそう言った。
俺も、あの当時のことを思い出していた。
シルナがキルディリア魔王国から帰ってきた時、非常に疲れた表情で語ってくれたことを。


