目の前に広がるのは、スタイリッシュなデザインで、モノトーンで統一されたオシャレな大きめの一軒家。
どうやらここが将来わたしも住むことになるかもしれないお家らしい。
もしかして、未来の旦那様は富裕層だったりするの…?
「雪。心の準備が出来たらインターホンを鳴らして」
ママに言われて、より一層現実味を帯びる。
この玄関の扉の向こうには、私の未来の旦那様がいる。
そして私は、その未来の旦那様のお嫁さんになる。
今にも飛び出しそうな胸の鼓動を抑えながら、
震える指でインターホンを鳴らす。
ピンポーン
「はい。今開けます。」
少し低めの声が聞こえた。扉越しにパタパタと音が聞こえて、だんだん近づいてくる。
鍵が「ガチャリ」と開いた音がして、ゆっくりと玄関の扉が開かれる。
そこで私たちを出迎えてくれたのは、
見覚えのある、私よりも少し年上か同じくらいの、背が高くて端正な顔立ちをしていて、綺麗な二重に切れ長の黒い瞳を持つ、あの花屋さんで会った若い男性のお客さんだった。
_____________________
呆然とする私を見て、
その若い男性のお客さん、いや、私の未来の旦那様は
「まさか挨拶前に会うとは思いませんでした」
と言って、二重で少し切れ長の瞳をくしゃっと微笑んで笑った。
先程、お花屋さんでたまたま会った人が、まさかの未来の旦那様だったなんて思いもしなかった。
真剣に女性の為に花を選んでいたあの時の表情。
恐らくあれは私の為だったという事になる。
思い出しただけで少し顔を赤らめてしまう。
「久しぶりねえ月!大きくなって!数年会わない間に立派になったのね!でも待って、雪。いつの間にか月と面識あったの?」
「久しぶりだね月。元気にしてたかい?」
1歩も動けない私を余所目に、パパとママは懐かしそうに会話に花を咲かせている。
「お久しぶりです、徹《とおる》さん、麗《うらら》さん。雪さんとはたまたまさっき花屋で会いました。立ち話も失礼なので入ってください。中で両親も待ってますから。」
徹、麗はパパとママの名前。
パパとママの名前も知っているし、どこか親しげな関係に見える。自己紹介もしていないのに私の名前も知っている。どうやら相手は私の事も知っているみたい。
「あのちっちゃかった月が敬語を使っているだなんて感動だわ…!じゃあ失礼して上がらせて貰うわね」
「雪さんも入ってください」
「あ、失礼します…!」
_____________________
開放感のある、広いリビングにお邪魔すると、そこにはすごく端正で麗しい顔立ちをした、どこかの別の国特有のような金髪を持つ綺麗な女性と、月さんにそっくりで年相応の整った顔立ちの男性が同座していた。
「陣!ミワ!久しぶり!」
「徹も麗も久しいな!会えて嬉しいぜ!」
その男性と女性は月さんのご両親の陣《じん》さん、ミワさん。そしてパパとママの高校の頃の同級生で大切な友人。
パパとママも、その2人に会った途端、すごく嬉しそうに喜び、長い間会っていなかった期間のお互いの話を楽しそうにし始めた。
陣さんもミワさんも、モデルか俳優か疑ってしまうほどすごく顔が整っていて、月さんの綺麗で端正な顔立ちも両親から来るものだと一瞬で理解する事が出来る程だった。きっと月さんはどこかの国とのハーフなのだろう。
______________________
「両親と徹さん達が話盛り上がってるので俺達も自己紹介しますか。雪さん、こっちの方来て座ってください」
慣れないリビングで立ち尽くしていると、月さんは
そう声を掛けてくれた。
私をふかふかの椅子に座らせると、
パパ達が買ってきたお茶菓子をお皿の上に開けてくれて、温かいミルクティーを入れてくれた。
「すみません、色々とありがとうございます…」
元々ある人見知りと動揺と、緊張でいつも以上に言葉が出てこない。あまりにも綺麗な、端正な顔立ちをしているせいで相手の事もしっかりと直視できない。
「他の人の家って緊張しますよね。いつかは慣れてくれると嬉しい。」
その言葉で再度、この家で将来暮らすことになる事を実感し、鼓動がより一層うるさくなった。
「改めまして、俺は久龍 月《くりゅう げつ》です。
雪さんと同い年。さっき花屋で会った時はあえて雪さんだと知らないフリしたけど、実はすごく驚きました。まさか会うとは」
「あ、私は雨花 雪です…あの、ごめんなさい、人見知りなので緊張しちゃって…」
「俺は雪さんの事、色々両親から聞いてたし、なんなら顔も知ってたからあれだけど、多分雪さんは俺の顔も中身もあんまり知らされてなかった感じだよね。期待はずれだったら悪い。俺、結構初対面の人に怖いって思われがちだから」
そう言うと、困り眉をしてほんの少しだけ寂しそうににこりと笑った。
「え、そんな事ないです…!怖くない…!」
「ほんとに?それは良かった」
確かに、あまりにも綺麗で端正な顔立ちをしているせいか、存在感もあり、言い換えると、真顔の時は少し威圧感も感じる。
でも物腰はすごく柔らかく、優しい人だと伝わる。
なにより、笑った時の顔が少し幼くて可愛さを感じてしまう。その笑った顔を見る度に、鼓動が高鳴る。
「俺も、やっぱり婚約者が雪さんで良かったです。」
顔が赤くなるのが、自分でもよく分かるほど、
熱くなった。
どうやらここが将来わたしも住むことになるかもしれないお家らしい。
もしかして、未来の旦那様は富裕層だったりするの…?
「雪。心の準備が出来たらインターホンを鳴らして」
ママに言われて、より一層現実味を帯びる。
この玄関の扉の向こうには、私の未来の旦那様がいる。
そして私は、その未来の旦那様のお嫁さんになる。
今にも飛び出しそうな胸の鼓動を抑えながら、
震える指でインターホンを鳴らす。
ピンポーン
「はい。今開けます。」
少し低めの声が聞こえた。扉越しにパタパタと音が聞こえて、だんだん近づいてくる。
鍵が「ガチャリ」と開いた音がして、ゆっくりと玄関の扉が開かれる。
そこで私たちを出迎えてくれたのは、
見覚えのある、私よりも少し年上か同じくらいの、背が高くて端正な顔立ちをしていて、綺麗な二重に切れ長の黒い瞳を持つ、あの花屋さんで会った若い男性のお客さんだった。
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呆然とする私を見て、
その若い男性のお客さん、いや、私の未来の旦那様は
「まさか挨拶前に会うとは思いませんでした」
と言って、二重で少し切れ長の瞳をくしゃっと微笑んで笑った。
先程、お花屋さんでたまたま会った人が、まさかの未来の旦那様だったなんて思いもしなかった。
真剣に女性の為に花を選んでいたあの時の表情。
恐らくあれは私の為だったという事になる。
思い出しただけで少し顔を赤らめてしまう。
「久しぶりねえ月!大きくなって!数年会わない間に立派になったのね!でも待って、雪。いつの間にか月と面識あったの?」
「久しぶりだね月。元気にしてたかい?」
1歩も動けない私を余所目に、パパとママは懐かしそうに会話に花を咲かせている。
「お久しぶりです、徹《とおる》さん、麗《うらら》さん。雪さんとはたまたまさっき花屋で会いました。立ち話も失礼なので入ってください。中で両親も待ってますから。」
徹、麗はパパとママの名前。
パパとママの名前も知っているし、どこか親しげな関係に見える。自己紹介もしていないのに私の名前も知っている。どうやら相手は私の事も知っているみたい。
「あのちっちゃかった月が敬語を使っているだなんて感動だわ…!じゃあ失礼して上がらせて貰うわね」
「雪さんも入ってください」
「あ、失礼します…!」
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開放感のある、広いリビングにお邪魔すると、そこにはすごく端正で麗しい顔立ちをした、どこかの別の国特有のような金髪を持つ綺麗な女性と、月さんにそっくりで年相応の整った顔立ちの男性が同座していた。
「陣!ミワ!久しぶり!」
「徹も麗も久しいな!会えて嬉しいぜ!」
その男性と女性は月さんのご両親の陣《じん》さん、ミワさん。そしてパパとママの高校の頃の同級生で大切な友人。
パパとママも、その2人に会った途端、すごく嬉しそうに喜び、長い間会っていなかった期間のお互いの話を楽しそうにし始めた。
陣さんもミワさんも、モデルか俳優か疑ってしまうほどすごく顔が整っていて、月さんの綺麗で端正な顔立ちも両親から来るものだと一瞬で理解する事が出来る程だった。きっと月さんはどこかの国とのハーフなのだろう。
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「両親と徹さん達が話盛り上がってるので俺達も自己紹介しますか。雪さん、こっちの方来て座ってください」
慣れないリビングで立ち尽くしていると、月さんは
そう声を掛けてくれた。
私をふかふかの椅子に座らせると、
パパ達が買ってきたお茶菓子をお皿の上に開けてくれて、温かいミルクティーを入れてくれた。
「すみません、色々とありがとうございます…」
元々ある人見知りと動揺と、緊張でいつも以上に言葉が出てこない。あまりにも綺麗な、端正な顔立ちをしているせいで相手の事もしっかりと直視できない。
「他の人の家って緊張しますよね。いつかは慣れてくれると嬉しい。」
その言葉で再度、この家で将来暮らすことになる事を実感し、鼓動がより一層うるさくなった。
「改めまして、俺は久龍 月《くりゅう げつ》です。
雪さんと同い年。さっき花屋で会った時はあえて雪さんだと知らないフリしたけど、実はすごく驚きました。まさか会うとは」
「あ、私は雨花 雪です…あの、ごめんなさい、人見知りなので緊張しちゃって…」
「俺は雪さんの事、色々両親から聞いてたし、なんなら顔も知ってたからあれだけど、多分雪さんは俺の顔も中身もあんまり知らされてなかった感じだよね。期待はずれだったら悪い。俺、結構初対面の人に怖いって思われがちだから」
そう言うと、困り眉をしてほんの少しだけ寂しそうににこりと笑った。
「え、そんな事ないです…!怖くない…!」
「ほんとに?それは良かった」
確かに、あまりにも綺麗で端正な顔立ちをしているせいか、存在感もあり、言い換えると、真顔の時は少し威圧感も感じる。
でも物腰はすごく柔らかく、優しい人だと伝わる。
なにより、笑った時の顔が少し幼くて可愛さを感じてしまう。その笑った顔を見る度に、鼓動が高鳴る。
「俺も、やっぱり婚約者が雪さんで良かったです。」
顔が赤くなるのが、自分でもよく分かるほど、
熱くなった。
