紬は前職でのセクハラは『自分自身に問題があるせいだから』と嫌だと思いつつも我慢する。が、家族である愛犬コトの体調不良時に休みが認められなかったことで、転職を決意。「コトが一番。コトを守れる働き方をしたい。」と願う紬は退職代行サービスを利用し、退職して転職。その相談に乗ってくれたのが隣人。ペット可のお部屋を探した際に運よく見つけ、入居できた場所。部屋はそれぞれ部屋番号での表示しかなく、声から男性ということまでしかわからない。泣きながら、コトを預けときにも快く引き受けてくださり、動物病院まで受診にも連れて行ってくれた。なんなら相談にまで乗ってくれ、優しい。心身ともに疲弊していた紬には温かく感じた。
IT企業で高倉 紬が第二新卒として入社したときに2人は初めて出会う。互いに隣人同士だとは気づいておらず、先に気づくのは桐谷 廉志。第二新卒は新卒と同じように、OFF-JTを経てOJTそして配属が決まる。廉志は紬のJT社員及び教育担当になった。今回紬の担当になる廉志は過去に2人の担当になったことがある。つまり紬は3人目だった。仕事や業務以前に社員同士のコミュニケーションが何よりも大切だと知っていた廉志は紬となるべく多く会話をしようとしていた。その中で次第に心を開いた紬がこぼしたエピソードの一つに転職理由があった。紬が話した内容は詳くわなかったが、隣人で相談に乗っていた人物が彼女だったと廉志は気づいた。愛犬について聞くと表情が明るくなる紬に廉志は必ず紬の愛犬の話題に触れるようにした。
不器用ながら、廉志の指導内容を理解し、一生懸命吸収していく紬の姿。その真剣な表情と、愛犬コトについて話すときの彼女のギャップに惹かれた廉志。打ち解けつつある2人に、紬がある提案をした。
「桐谷さん、動物がお嫌いでなければ今度犬カフェにでも行きませんか?」
普段お世話になりっぱなしの紬は、勇気を出して誘ってみた結果、2人(+コト)で犬カフェに出かけることが決定。当日はお互いに私服。いつもスーツだからか新鮮で紬には廉志がよりかっこよく、廉志は紬が可愛く見えていた。気まずい雰囲気になりそうなときはコトが手助けしてくれ、充実した一日を過ごす。
廉志から紬に相談が持ち掛けられた、ある日。前日、爽やかさに陰りがあった廉志。眉間にしわが寄っていた。もちろん、受け答えするときにはそんな素振りは見せなかったが。教育してもらう側として近くにいつもいた紬は廉志の変化に気付いていた。廉志に謝ると、「髙倉さんのせいじゃない。心配をかけてすまないと」逆に謝られてしまう。「いつも返せないくらいの恩をもらっているので、役に立つことがあれば気兼ねなく仰ってください。」とその日は引き下がって業務を終えた。昨日の疲れはどこへ?というくらいいつも以上にビシッっと決まった廉志の姿が。休憩時間に、持ち掛けられた相談内容。それは『一緒にパーティーへ来てくれないか』というものだった。退勤時に答えを聞くからとそこから先は仕事。そして気づけば業務も終了し、退勤時刻。「役に立つどころか私なんかが場違いで、烏滸がましいです。」と断ろうと口を開いた時、「うちのシステムを使ってくれている利用者の多くが参加するパーティーで、顧客に顔と名前を覚えてもらえるまたとない機会でもある。どうだろうか。」と言われて、反射的に「わかりました」と言う紬。あれよあれよというままにタクシー(実はタクシーではなく廉志専属の執事が運転する車)に乗せられ、きらびやかなお店に到着。店員の指示のもと動くしかない紬。からだのサイズをはかり、ドレスに着替え、メイクを施され、それに合わせて髪も。そして「眼鏡はかけないでください」と最後に言われる。お代を払おうと「既に頂いておりますので結構です」と断られ、廉志の待つ場所へ。紬の姿に目を見張った廉志だが、「きれいだ」とすぐに紬に伝える。紬は戸惑ったものの、お世辞だと受けとった。「澪泉さま、本日はお越しいただき誠にありがとうございました」背中に店員さんの声を受けながら再度タクシーに乗る。眼鏡をかけられないせいで視界がぼやけ、ヨロついていたことに気づいた廉志は「掴まれ」と自身の腕を支えに使えといってくれた。このドレスがどのくらいのお値段だったのかはわからない紬だったが、店員さんの接客態度から見ても高いことは想像に難くない。紬は出入り口まで見送られる経験なんて今までなかったから。「あざしたー」「ありがとう、ございましたぁ~」くらいしか言われたことがない。唯一気になったのは、呼び方。『こんなお店でもお客様の名前を間違えてしまうことがあるんだ。ま、人間だもんね。』と結論付けた紬。会場入りし、分かったのは、鞄からメモをとる暇もなくひっきりなしに挨拶にくる人たちが多いのなんの。目が今は見えにくいから、声と話し方などから特徴をつかんでメモでも取って......っと思って紬だけど、そんなことできそうにもない。それに視線が刺さってとっても居心地が悪い紬。周りに集まってくる人たちとあいさつを交わしながら話を進めていく姿を見てかっこいいと思うと同時に時期リーダとも言われている廉志の仕事は大変だななんて思っていた紬。気になったのは全員が廉志に敬語を使っていたこと。それを何ともない風に気にせず受け答えしていく廉志。そして時折、廉志のことを先ほどの店員さんのように『澪泉』と呼んでいる人がいること。一向に減らないので紬は少し離れて立ってた。男性が紬の周りにいるけれど話しかけようとはしない。互いに見知らぬ顔の美人に誰が話しかけに行くかでもめていた。
「先ほどまで澪泉さまのそばにいらしたわよね。」
「壁の花になるのはよして、私たちと話しませんこと?」
と声をかけたのは2人の女性。静かな場所に連れて来られた。
「「あなた、澪泉さまの婚約者か何か?」」
紬は頭の中がハテナでいっぱいである。澪泉さまとはどうやら廉志を指す名前だということ。男性がパーティー会場に女性と伴にくるのは相手と婚約またはそれに近しい間柄であること。以上の2点について彼女たちから聞き理解した紬。会社の業務にかかわることでもあるから勉強の一環として消え入る旨を伝えると、怪しまれながらも渋々頷いてくれた。歩きなれないせいで疲れていたためなんとか言い訳をして2人を先に会場に戻した紬。ゆっくり壁伝いに転ばぬようなんとか戻ると人の輪から解放されていた廉志。廉志は心配してくれたのだ。紬は名前の件には触れないようにする。
OJT期間も終わり、雑務以外の実際の業務にも慣れつつある紬に舞い込んできた大きな仕事。企業の顧客対応だった。顧客が望むものを聞きニーズを把握、要望を全て叶えることは難しいため、意見をすり合わせる。システムの構成や機能、費用や実装までにかかる期間の提示も行う。若手にも経験をということでチームのみんなも応援してくれている。主に顧客と対話するのは紬であるが、メンバーには廉志がいて、当日同席してくれることになる。
当日、来社したのは紬の前職の上司だった。企業名が変更と名前はありきたりで気にしていなかった。気まずい雰囲気の中3人で名刺交換。紬を下にみて、付け上がり話してく顧客である前職の上司は紬の話を聞くことはなくどんどん一方的に話し、前職で紬がどんな風だったのか桐谷に話し始めた。紬がまるで透明人間かであるかのように接する前職上司に向かって、廉志は撃退。萎縮する前職上司を相手に紬に続けるか聞くと、続けますという紬。前職上司ににらみを聞かせる状態でなんとか終わる。その一回限りだといけないかったけど、廉志のお陰で滞りなく進めることができ、納品実装まできた。
社内共有広場にて、「私、桐谷さん狙っちゃおーかなー♪」と宣う女子3人組。全員部署が違い、マドンナ・お局・廉志の教え子1人目とあだ名が付いている。年齢もバラバラなのに一緒にいる姿をよく見かけるのは、桐谷狙い隊だからだ。仲がいいというわけではなく、牽制しあうためだけに一緒にいる3人。廉志がOJT社員として対応した2人目の社員はおめでたで離職中。彼女らの目に映る紬は邪魔な存在。3人組は廉志に近い女性を目の敵にしており、そんなときだけ協力しあい、廉志の目につかないところで執拗に紬にあたる。が、ある日廉志は紬が詰め寄られている場面に遭遇。3人を追っ払う。翌日噂になったのは3人組が退職したということ。名札が消え、ロッカーの装飾品もきれいさっぱりなかったらしい。その日のお昼後、とある人がやってきていた。紬は席を外していたのだが、なんと来ていたのは社長。
「今日まで廉志がお世話になった。時期リーダとまで言われるほど成長していたとはな。」
「みなさん、黙っていてすみません。桐谷は母の旧姓でして。本当は澪泉廉志と言います。」
「コネではなく、実力でここまできた廉志を皆も知っていることだろう。人事異動にしては早いが、今までも経営の勉強や手伝いをさせてきてはいた。が、今回社長補佐として正式に移動してもらうことになった。」
「こんな形ですみません。信頼を裏切るような......」
「頑張ってください」と「応援しています」という声しか上がらないSEたち
後から話を聞いた紬はというと、驚きすぎて開いた口が塞がらないという言葉がぴったり。廉志から届いた社内メール。退勤後少し話せるかという内容だった。帰路につきながら二人並んで帰るんだけど、紬は私なんか送らなくてもいいですよと断るも、一人で歩かせるなんてできない。髙倉さんは可愛いんだからという言葉。お世辞だとしても気になっている、いや、好いている人にそんなことを言われると頬が染まってしまう。暗いからセーフと並んで歩く。寄り道しませんかと提案され、承諾する紬。そこで廉志から告白される。憧れの好きな人からの告白を嬉しく思う紬だが、しかし同時に恋人として隣に立つ自分が想像できない。
保留にしてしまう紬は帰宅後、コトに話しかけながら廉志との思い出を振り返っていく。仕事の面で大きく成長できた自分を支えてくれたのは廉志だ。紬は廉志を嫌いになることや関わりを減らしていくことはできないと行きつく。もう夜も遅く明日は会社が休みである。明日電話でもかけてみようと決意した紬。担当になって何か困ったことがあればいつでも連絡していいからと初日に渡されていた番号が書かれてある紙をしまってあった場所から取り出し、手に握りしめてテラスへ出た。星に声に出し祈る紬。
『明日、好きな人に伝える勇気をください。』
そうしたら、隣人がテラスから紬を呼んでいた。身を少し乗り出してみると、あちらも同じように身を乗り出していた。
手にはビールを持った廉志がそこに、紬の前にいた。「誰になんて言うつもりなんだ」と聞かれ、「あなたにです」なんてすぐには言えなかった紬。「酔ってる桐谷さん、いや、澪泉さんに言えるわけないじゃないですか。部屋に戻って寝てください!私も寝ますのでお休みなさい!」と早口に部屋に戻った紬。隣人が廉志だなんて知らなかった紬。転職相談に乗ってくれたのも廉志だったと知る。さっきの呟いた祈りを聞かれたことで恥ずかしくなる紬。好きな人にお休みなさいと言えてしまった嬉しさ。いろ色込み上げてきて、次の日、コトを連れてインターホンを押した。「朝の散歩ご一緒しませんか?」と紬は廉志を誘い出した。無言が続くなか、遂に紬が廉志に好きだと告白。電話で月曜日にじゃなかった?とからかわれる。
「今日言いたかったんです。夜電話もしてもいいですか?」
「いつでもどうぞ」
「隣同士でも?」
「そう。ベランダで話すのも、部屋を行き来するも付け加えといてくれたら嬉しいな」
IT企業で高倉 紬が第二新卒として入社したときに2人は初めて出会う。互いに隣人同士だとは気づいておらず、先に気づくのは桐谷 廉志。第二新卒は新卒と同じように、OFF-JTを経てOJTそして配属が決まる。廉志は紬のJT社員及び教育担当になった。今回紬の担当になる廉志は過去に2人の担当になったことがある。つまり紬は3人目だった。仕事や業務以前に社員同士のコミュニケーションが何よりも大切だと知っていた廉志は紬となるべく多く会話をしようとしていた。その中で次第に心を開いた紬がこぼしたエピソードの一つに転職理由があった。紬が話した内容は詳くわなかったが、隣人で相談に乗っていた人物が彼女だったと廉志は気づいた。愛犬について聞くと表情が明るくなる紬に廉志は必ず紬の愛犬の話題に触れるようにした。
不器用ながら、廉志の指導内容を理解し、一生懸命吸収していく紬の姿。その真剣な表情と、愛犬コトについて話すときの彼女のギャップに惹かれた廉志。打ち解けつつある2人に、紬がある提案をした。
「桐谷さん、動物がお嫌いでなければ今度犬カフェにでも行きませんか?」
普段お世話になりっぱなしの紬は、勇気を出して誘ってみた結果、2人(+コト)で犬カフェに出かけることが決定。当日はお互いに私服。いつもスーツだからか新鮮で紬には廉志がよりかっこよく、廉志は紬が可愛く見えていた。気まずい雰囲気になりそうなときはコトが手助けしてくれ、充実した一日を過ごす。
廉志から紬に相談が持ち掛けられた、ある日。前日、爽やかさに陰りがあった廉志。眉間にしわが寄っていた。もちろん、受け答えするときにはそんな素振りは見せなかったが。教育してもらう側として近くにいつもいた紬は廉志の変化に気付いていた。廉志に謝ると、「髙倉さんのせいじゃない。心配をかけてすまないと」逆に謝られてしまう。「いつも返せないくらいの恩をもらっているので、役に立つことがあれば気兼ねなく仰ってください。」とその日は引き下がって業務を終えた。昨日の疲れはどこへ?というくらいいつも以上にビシッっと決まった廉志の姿が。休憩時間に、持ち掛けられた相談内容。それは『一緒にパーティーへ来てくれないか』というものだった。退勤時に答えを聞くからとそこから先は仕事。そして気づけば業務も終了し、退勤時刻。「役に立つどころか私なんかが場違いで、烏滸がましいです。」と断ろうと口を開いた時、「うちのシステムを使ってくれている利用者の多くが参加するパーティーで、顧客に顔と名前を覚えてもらえるまたとない機会でもある。どうだろうか。」と言われて、反射的に「わかりました」と言う紬。あれよあれよというままにタクシー(実はタクシーではなく廉志専属の執事が運転する車)に乗せられ、きらびやかなお店に到着。店員の指示のもと動くしかない紬。からだのサイズをはかり、ドレスに着替え、メイクを施され、それに合わせて髪も。そして「眼鏡はかけないでください」と最後に言われる。お代を払おうと「既に頂いておりますので結構です」と断られ、廉志の待つ場所へ。紬の姿に目を見張った廉志だが、「きれいだ」とすぐに紬に伝える。紬は戸惑ったものの、お世辞だと受けとった。「澪泉さま、本日はお越しいただき誠にありがとうございました」背中に店員さんの声を受けながら再度タクシーに乗る。眼鏡をかけられないせいで視界がぼやけ、ヨロついていたことに気づいた廉志は「掴まれ」と自身の腕を支えに使えといってくれた。このドレスがどのくらいのお値段だったのかはわからない紬だったが、店員さんの接客態度から見ても高いことは想像に難くない。紬は出入り口まで見送られる経験なんて今までなかったから。「あざしたー」「ありがとう、ございましたぁ~」くらいしか言われたことがない。唯一気になったのは、呼び方。『こんなお店でもお客様の名前を間違えてしまうことがあるんだ。ま、人間だもんね。』と結論付けた紬。会場入りし、分かったのは、鞄からメモをとる暇もなくひっきりなしに挨拶にくる人たちが多いのなんの。目が今は見えにくいから、声と話し方などから特徴をつかんでメモでも取って......っと思って紬だけど、そんなことできそうにもない。それに視線が刺さってとっても居心地が悪い紬。周りに集まってくる人たちとあいさつを交わしながら話を進めていく姿を見てかっこいいと思うと同時に時期リーダとも言われている廉志の仕事は大変だななんて思っていた紬。気になったのは全員が廉志に敬語を使っていたこと。それを何ともない風に気にせず受け答えしていく廉志。そして時折、廉志のことを先ほどの店員さんのように『澪泉』と呼んでいる人がいること。一向に減らないので紬は少し離れて立ってた。男性が紬の周りにいるけれど話しかけようとはしない。互いに見知らぬ顔の美人に誰が話しかけに行くかでもめていた。
「先ほどまで澪泉さまのそばにいらしたわよね。」
「壁の花になるのはよして、私たちと話しませんこと?」
と声をかけたのは2人の女性。静かな場所に連れて来られた。
「「あなた、澪泉さまの婚約者か何か?」」
紬は頭の中がハテナでいっぱいである。澪泉さまとはどうやら廉志を指す名前だということ。男性がパーティー会場に女性と伴にくるのは相手と婚約またはそれに近しい間柄であること。以上の2点について彼女たちから聞き理解した紬。会社の業務にかかわることでもあるから勉強の一環として消え入る旨を伝えると、怪しまれながらも渋々頷いてくれた。歩きなれないせいで疲れていたためなんとか言い訳をして2人を先に会場に戻した紬。ゆっくり壁伝いに転ばぬようなんとか戻ると人の輪から解放されていた廉志。廉志は心配してくれたのだ。紬は名前の件には触れないようにする。
OJT期間も終わり、雑務以外の実際の業務にも慣れつつある紬に舞い込んできた大きな仕事。企業の顧客対応だった。顧客が望むものを聞きニーズを把握、要望を全て叶えることは難しいため、意見をすり合わせる。システムの構成や機能、費用や実装までにかかる期間の提示も行う。若手にも経験をということでチームのみんなも応援してくれている。主に顧客と対話するのは紬であるが、メンバーには廉志がいて、当日同席してくれることになる。
当日、来社したのは紬の前職の上司だった。企業名が変更と名前はありきたりで気にしていなかった。気まずい雰囲気の中3人で名刺交換。紬を下にみて、付け上がり話してく顧客である前職の上司は紬の話を聞くことはなくどんどん一方的に話し、前職で紬がどんな風だったのか桐谷に話し始めた。紬がまるで透明人間かであるかのように接する前職上司に向かって、廉志は撃退。萎縮する前職上司を相手に紬に続けるか聞くと、続けますという紬。前職上司ににらみを聞かせる状態でなんとか終わる。その一回限りだといけないかったけど、廉志のお陰で滞りなく進めることができ、納品実装まできた。
社内共有広場にて、「私、桐谷さん狙っちゃおーかなー♪」と宣う女子3人組。全員部署が違い、マドンナ・お局・廉志の教え子1人目とあだ名が付いている。年齢もバラバラなのに一緒にいる姿をよく見かけるのは、桐谷狙い隊だからだ。仲がいいというわけではなく、牽制しあうためだけに一緒にいる3人。廉志がOJT社員として対応した2人目の社員はおめでたで離職中。彼女らの目に映る紬は邪魔な存在。3人組は廉志に近い女性を目の敵にしており、そんなときだけ協力しあい、廉志の目につかないところで執拗に紬にあたる。が、ある日廉志は紬が詰め寄られている場面に遭遇。3人を追っ払う。翌日噂になったのは3人組が退職したということ。名札が消え、ロッカーの装飾品もきれいさっぱりなかったらしい。その日のお昼後、とある人がやってきていた。紬は席を外していたのだが、なんと来ていたのは社長。
「今日まで廉志がお世話になった。時期リーダとまで言われるほど成長していたとはな。」
「みなさん、黙っていてすみません。桐谷は母の旧姓でして。本当は澪泉廉志と言います。」
「コネではなく、実力でここまできた廉志を皆も知っていることだろう。人事異動にしては早いが、今までも経営の勉強や手伝いをさせてきてはいた。が、今回社長補佐として正式に移動してもらうことになった。」
「こんな形ですみません。信頼を裏切るような......」
「頑張ってください」と「応援しています」という声しか上がらないSEたち
後から話を聞いた紬はというと、驚きすぎて開いた口が塞がらないという言葉がぴったり。廉志から届いた社内メール。退勤後少し話せるかという内容だった。帰路につきながら二人並んで帰るんだけど、紬は私なんか送らなくてもいいですよと断るも、一人で歩かせるなんてできない。髙倉さんは可愛いんだからという言葉。お世辞だとしても気になっている、いや、好いている人にそんなことを言われると頬が染まってしまう。暗いからセーフと並んで歩く。寄り道しませんかと提案され、承諾する紬。そこで廉志から告白される。憧れの好きな人からの告白を嬉しく思う紬だが、しかし同時に恋人として隣に立つ自分が想像できない。
保留にしてしまう紬は帰宅後、コトに話しかけながら廉志との思い出を振り返っていく。仕事の面で大きく成長できた自分を支えてくれたのは廉志だ。紬は廉志を嫌いになることや関わりを減らしていくことはできないと行きつく。もう夜も遅く明日は会社が休みである。明日電話でもかけてみようと決意した紬。担当になって何か困ったことがあればいつでも連絡していいからと初日に渡されていた番号が書かれてある紙をしまってあった場所から取り出し、手に握りしめてテラスへ出た。星に声に出し祈る紬。
『明日、好きな人に伝える勇気をください。』
そうしたら、隣人がテラスから紬を呼んでいた。身を少し乗り出してみると、あちらも同じように身を乗り出していた。
手にはビールを持った廉志がそこに、紬の前にいた。「誰になんて言うつもりなんだ」と聞かれ、「あなたにです」なんてすぐには言えなかった紬。「酔ってる桐谷さん、いや、澪泉さんに言えるわけないじゃないですか。部屋に戻って寝てください!私も寝ますのでお休みなさい!」と早口に部屋に戻った紬。隣人が廉志だなんて知らなかった紬。転職相談に乗ってくれたのも廉志だったと知る。さっきの呟いた祈りを聞かれたことで恥ずかしくなる紬。好きな人にお休みなさいと言えてしまった嬉しさ。いろ色込み上げてきて、次の日、コトを連れてインターホンを押した。「朝の散歩ご一緒しませんか?」と紬は廉志を誘い出した。無言が続くなか、遂に紬が廉志に好きだと告白。電話で月曜日にじゃなかった?とからかわれる。
「今日言いたかったんです。夜電話もしてもいいですか?」
「いつでもどうぞ」
「隣同士でも?」
「そう。ベランダで話すのも、部屋を行き来するも付け加えといてくれたら嬉しいな」


