モデルなんてできません

「瀬戸さん」
仕事が終わり、帰ろうとする私を課長の中本さんが呼び止めた

「お疲れ様です」

‘ちょっと話せる?‘
中本さんは上を指さして私に声をかける
‘あっはい‘
私達は会社の屋上で話す事にした

2人で話しててパートのおばさん達にいらん噂をされたら嫌だなと思ったけど、もうおばさん達は帰ってる時間なので大丈夫だからまあいいかと屋上に行く事にした

屋上はさっきまでの曇り空が嘘のように夕日が綺麗で晴れていた

「話って私を社員にというお話ですよね?」
ずばり真意をついて聞いてみる

「そうだね。瀬戸さんは社員を断るつもりでしょ?」
何で分かるんですか?と聞きたくなったけど中本さんの鋭すぎる指摘に言葉が出なかった

私の表情で分かったのか、‘やっぱり‘と話を続ける中本さん

「小説家の夢があることは知ってるよ。それでバイトでいるって聞いた。でも社員になっても小説は書けるんじゃないかな?今は非正規雇用の人達もどんどん正社員になって働く時代だから、バイトにこだわらないで、正社員になってもいいと思うんだ。」
‘すぐに断ろうとするんじゃなくて、来週までまだ時間があるからじっくり考えてみて‘
‘それから、、‘と中本さんは続ける
「僕って結構諦めが悪いんだ。もし彼氏とうまくいってなかったりしたら、僕が立候補するから」

「えっ?」
意外すぎる言葉に私は耳を疑いたくなった

「はっきり言わないと瀬戸さんには伝わらないみたいだから。勿論社員の話は、それとは全く別の話だから、会社の同僚として考えて欲しい。仕事も公私混同とかは絶対しないから。」
‘じゃ、そういうことなんで‘
そう言うと中本さんは屋上を後にした
よくみると耳が真っ赤だった
余程頑張って言ってくれたらしい

‘今のって?中本さん私のこと?‘
「ええ〜!」
誰もいない屋上で、思わず声を出してしまった

中本さんの気持ちを聞いてしまい、私は何とも言えない複雑な気持ちになるのだった

京介くんはアメリカ行っちゃうし、社員の打診はあるし、中本さんには気持ちを打ち明けられるし!?

何?この状況?こんな事ってあるの?
私は迷宮にはまって出られなくなってしまったように更に悩んでしまうのだった