翌朝。前日の夜からずっと外出を楽しみにしていた子らは、いつもこのぐらい真剣に食べてほしいなと思えるぐらいに早く朝食を食べ終え、準備も順調に進んだ。子らはテンション高めで俺も笑顔が溢れてくる。
外に出ると、先頭は俺と魔王、最後尾には執事。ギルバードは魔王に抱かれ、赤ん坊のホワイトは執事に抱かれる。そして大人の間に、子らが大きい子と小さい子、それぞれ二名ずつ手を繋いでゆっくりと店や人で賑わっている街を歩いた。おそらく村人などに扮した暗殺集団もついてきているだろう。
魔王は今、長い漆黒の髪を後ろに纏め、細かく綺麗な模様の入った銀色のハーフマスクを装着していた。さらにいつもの黒い装いではなく、白いローブを身に纏いフードを深く被っている。あきらかに変装をしている様子だ。
魔王にとって、今の生活は居心地が悪いのではないか? ふと、魔王がもっと過ごしやすく生きられるようになるアイディアはないかと考えてしまう。
――魔王のために?
そこまでする必要はないのか。
魔王に向けていた視線を、後ろを歩く子らに移した。全員で出かける機会はないらしく、新鮮な空気を浴びながら楽しそうに歩いていた。だが、この平和な雰囲気は秋の空のように、すぐに崩れるだろう。チートの力を使えば余裕で乗り越えられるとは思うが。
しばらくすると、予想通りに「疲れた」とチラホラ聞こえ始めた。とりあえず休憩のために道端にある草むらに誘導し、並んで腰を下ろす。辺りには飲食店が多いからか、腹のすくような香りが漂ってくる。目の前に菓子を手に持つ母と幼い子が通り過ぎた。なんとなく子らをチラリ見る。
「お菓子、食べたい……」
予想通り、幼い子らはその親子を眺めながら羨ましがっているようだ。
「どこかの店の中でひとやすみしようか。どこかでデザートでも食べようか?」
「やったー!」
「食べたーい!」
俺がそう言うと、曇っていた子らの瞳が輝き出す。外観が可愛らしい、屋根がイチゴケーキのようで壁がウッド調の大きな店の中に入った。広々とした店内は老若男女で賑わっていた。
混みあっているし、ゆっくりと食べることは出来なさそうだな。すぐに小さい子ら中心に飽きだし、動き回りそうだから、目的を果たしたら迷惑をかける前にさっさと帰ろう。と思っていたのだが、女の若い店員が「おもちゃがある個室にご案内いたしますか?」と提案してくれた。俺は迷うことなく頷いた。
準備のために少し待たされる。階段を上がると、全員入っても余裕な広さのある個室に案内された。白い壁にある大きなレインボーの模様がぱっと目に入る。
円形のテーブルが三卓並べられ、大人用の椅子に混ざり子供用の椅子も人数分きちんと準備してくれていた。魔力で浮いている小さな雲の乗り物やロッキング木馬、飛び出す絵本もある。それぞれ席につき、メニュー表を眺める。ランチも充実していた。
「ついでに、昼飯もここで食べていくか?」
「その提案、良いかと思われます。リュオン様はいかがでしょうか?」
ハーフマスクを外した魔王は、楽しそうに遊んでいる子らに視線を向けていた。そして僅かに口角を上げながら「あぁ、良いと思う」と返事をした。その表情に吸い込まれそうになる。普段ツンケンなイメージなのに、子らに対しての眼差しは怒りが込み上げている時以外は本当に優しい。俺も優しい眼差しで魔王に見られたいなと、ふと思う――。
外に出ると、先頭は俺と魔王、最後尾には執事。ギルバードは魔王に抱かれ、赤ん坊のホワイトは執事に抱かれる。そして大人の間に、子らが大きい子と小さい子、それぞれ二名ずつ手を繋いでゆっくりと店や人で賑わっている街を歩いた。おそらく村人などに扮した暗殺集団もついてきているだろう。
魔王は今、長い漆黒の髪を後ろに纏め、細かく綺麗な模様の入った銀色のハーフマスクを装着していた。さらにいつもの黒い装いではなく、白いローブを身に纏いフードを深く被っている。あきらかに変装をしている様子だ。
魔王にとって、今の生活は居心地が悪いのではないか? ふと、魔王がもっと過ごしやすく生きられるようになるアイディアはないかと考えてしまう。
――魔王のために?
そこまでする必要はないのか。
魔王に向けていた視線を、後ろを歩く子らに移した。全員で出かける機会はないらしく、新鮮な空気を浴びながら楽しそうに歩いていた。だが、この平和な雰囲気は秋の空のように、すぐに崩れるだろう。チートの力を使えば余裕で乗り越えられるとは思うが。
しばらくすると、予想通りに「疲れた」とチラホラ聞こえ始めた。とりあえず休憩のために道端にある草むらに誘導し、並んで腰を下ろす。辺りには飲食店が多いからか、腹のすくような香りが漂ってくる。目の前に菓子を手に持つ母と幼い子が通り過ぎた。なんとなく子らをチラリ見る。
「お菓子、食べたい……」
予想通り、幼い子らはその親子を眺めながら羨ましがっているようだ。
「どこかの店の中でひとやすみしようか。どこかでデザートでも食べようか?」
「やったー!」
「食べたーい!」
俺がそう言うと、曇っていた子らの瞳が輝き出す。外観が可愛らしい、屋根がイチゴケーキのようで壁がウッド調の大きな店の中に入った。広々とした店内は老若男女で賑わっていた。
混みあっているし、ゆっくりと食べることは出来なさそうだな。すぐに小さい子ら中心に飽きだし、動き回りそうだから、目的を果たしたら迷惑をかける前にさっさと帰ろう。と思っていたのだが、女の若い店員が「おもちゃがある個室にご案内いたしますか?」と提案してくれた。俺は迷うことなく頷いた。
準備のために少し待たされる。階段を上がると、全員入っても余裕な広さのある個室に案内された。白い壁にある大きなレインボーの模様がぱっと目に入る。
円形のテーブルが三卓並べられ、大人用の椅子に混ざり子供用の椅子も人数分きちんと準備してくれていた。魔力で浮いている小さな雲の乗り物やロッキング木馬、飛び出す絵本もある。それぞれ席につき、メニュー表を眺める。ランチも充実していた。
「ついでに、昼飯もここで食べていくか?」
「その提案、良いかと思われます。リュオン様はいかがでしょうか?」
ハーフマスクを外した魔王は、楽しそうに遊んでいる子らに視線を向けていた。そして僅かに口角を上げながら「あぁ、良いと思う」と返事をした。その表情に吸い込まれそうになる。普段ツンケンなイメージなのに、子らに対しての眼差しは怒りが込み上げている時以外は本当に優しい。俺も優しい眼差しで魔王に見られたいなと、ふと思う――。



