まだ外が暗い時間に目が覚めた。俺以外は全員ぐっすりと眠っていた。朝食を作るために、俺は静かにキッチンへ向かう。廊下を歩いていると、ダイニングルームから焼きたてのパンの香ばしい匂いが漂ってきた。部屋を覗くと明かりがついている。そして驚く光景が――。
クロワッサン、蒸した白身魚、チーズ。そして色とりどりの野菜と果物も……。
なんと、色鮮やかで栄養バランスのよさそうな朝食がテーブルの上に並んでいたのだ。
魔王が作ったのか?
でも魔王がいる気配はどこにもない。
上座から席は詰められ、ひとりひとりの席に並べられている料理。近くで料理を眺めていると全ての席にカードが置かれていることに気がついた。
――なんだ、これ?
魔王、勇者、執事、そして一から九までの数字が書かれていた。これってもしかして、座る席か? 子らの名前が数字なのが気になるけど……。
テーブルを眺めていると執事が赤ん坊を抱え、幼児三人を連れて部屋に入ってきた。
「勇者様、おはようございます。こちらは勇者様がご準備なされたのですか?」
「いや、違う。ここに来た時にはもう、準備されていた。魔王が準備したのかと」
「リュオン様が?……いや、この見た目や香りは、違いますね。一体誰が?」
怪訝そうな表情をして料理を眺める執事。
ふたりで首をかしげていると他の子らも入ってきた。中等部のひとりが「ラレスって、誰?」と、執事に訊ねた。
そして、その子は白い封筒を執事に渡した。
「勇者様のお名前がラレス様ですが。これは、どうしたのですか?」
「この封筒、そこの入口に落ちてた」
執事が問うと、子はこの部屋の入口を指さした。さっき通った時には何もなかったような気もするが……。
とりあえず俺はその封筒を執事から受け取る。『ラレス様へ』と封筒に書いてあった。すぐに封を開け、中身を確認してみた。執事も横から覗き込む。
『勇者ラレス様 キャンセルの件、承りました。勇者様の護衛の方々から直接お話をお伺いし、こちらでご朝食の準備をさせていただくこととなりました。どうぞ皆様でお召し上がりください。用意させていただいた料理は、できあがり直後の香りと味を堪能していただくために、特殊な魔法で加工いたしております。少しでも勇者様のお力になれれば幸いです。またいつか、勇者様がゆっくりお泊まりにいらしてくださる日を、心よりお待ちしております。 ホテル ローズプリンス』
俺の護衛って誰だよ――。
「執事、俺の泊まる予定だったホテル、どんな感じでキャンセルしたんだ?」
「昨夜、お詫びの言葉を添えて、勇者様が宿泊をキャンセルされることをお伝えいたしましたが……」
「朝食の話はしたのか? キャンセルは直接ホテルに行ってではないよな?」
「朝食のお話は一切しておりません。キャンセルはここからご連絡をして、お伝えいたしました」
この朝食は、もしかして魔王たちを監視している暗殺集団がホテルにお願いをして……だからホテルが準備をしてくれたのか……そして暗殺集団がここまで運んでテーブルの上に並べてくれたりもした?
「これは、暗殺集団が?」
「そのようですね」
俺はなんとなく天井を向く。
「おい、朝食ありがとな!!」
「ありがとうございます」
俺が叫び執事は小さな声でお礼を言う。すると、どこからか場所は分からなかったが、まるで返事をしてくれたように、コツンと大きな音がした。
クロワッサン、蒸した白身魚、チーズ。そして色とりどりの野菜と果物も……。
なんと、色鮮やかで栄養バランスのよさそうな朝食がテーブルの上に並んでいたのだ。
魔王が作ったのか?
でも魔王がいる気配はどこにもない。
上座から席は詰められ、ひとりひとりの席に並べられている料理。近くで料理を眺めていると全ての席にカードが置かれていることに気がついた。
――なんだ、これ?
魔王、勇者、執事、そして一から九までの数字が書かれていた。これってもしかして、座る席か? 子らの名前が数字なのが気になるけど……。
テーブルを眺めていると執事が赤ん坊を抱え、幼児三人を連れて部屋に入ってきた。
「勇者様、おはようございます。こちらは勇者様がご準備なされたのですか?」
「いや、違う。ここに来た時にはもう、準備されていた。魔王が準備したのかと」
「リュオン様が?……いや、この見た目や香りは、違いますね。一体誰が?」
怪訝そうな表情をして料理を眺める執事。
ふたりで首をかしげていると他の子らも入ってきた。中等部のひとりが「ラレスって、誰?」と、執事に訊ねた。
そして、その子は白い封筒を執事に渡した。
「勇者様のお名前がラレス様ですが。これは、どうしたのですか?」
「この封筒、そこの入口に落ちてた」
執事が問うと、子はこの部屋の入口を指さした。さっき通った時には何もなかったような気もするが……。
とりあえず俺はその封筒を執事から受け取る。『ラレス様へ』と封筒に書いてあった。すぐに封を開け、中身を確認してみた。執事も横から覗き込む。
『勇者ラレス様 キャンセルの件、承りました。勇者様の護衛の方々から直接お話をお伺いし、こちらでご朝食の準備をさせていただくこととなりました。どうぞ皆様でお召し上がりください。用意させていただいた料理は、できあがり直後の香りと味を堪能していただくために、特殊な魔法で加工いたしております。少しでも勇者様のお力になれれば幸いです。またいつか、勇者様がゆっくりお泊まりにいらしてくださる日を、心よりお待ちしております。 ホテル ローズプリンス』
俺の護衛って誰だよ――。
「執事、俺の泊まる予定だったホテル、どんな感じでキャンセルしたんだ?」
「昨夜、お詫びの言葉を添えて、勇者様が宿泊をキャンセルされることをお伝えいたしましたが……」
「朝食の話はしたのか? キャンセルは直接ホテルに行ってではないよな?」
「朝食のお話は一切しておりません。キャンセルはここからご連絡をして、お伝えいたしました」
この朝食は、もしかして魔王たちを監視している暗殺集団がホテルにお願いをして……だからホテルが準備をしてくれたのか……そして暗殺集団がここまで運んでテーブルの上に並べてくれたりもした?
「これは、暗殺集団が?」
「そのようですね」
俺はなんとなく天井を向く。
「おい、朝食ありがとな!!」
「ありがとうございます」
俺が叫び執事は小さな声でお礼を言う。すると、どこからか場所は分からなかったが、まるで返事をしてくれたように、コツンと大きな音がした。



