魔王の部屋の中は、他の部屋とは違い、豪華な装飾が一切無く、質素で静かな空間だった。
手伝ってはもらったが、トロッコから魔王を下ろすのに少し手間取った。ダイニングルームから近くて、魔王の寝室には一瞬でついたから、トロッコに乗せないで引きずっていった方が効率はよかったのか? いや、せっかく準備してくれたんだし、この方法でよかったよな。
魔王をベッドの上に乗せると、仰向けに寝かせた。そして布団をそっとかける。
「魔王、大丈夫かな?」
初等部の子が小さな声で俺に質問する。
「大丈夫だ、きっと。疲れてるからたくさん寝かせてやろうな」
「そうだね、魔王、またね」
会話をしながら部屋を出ようとした。
「わたち、魔王と寝たくなってきた」と、幼児チームの中で一番小さい子が半べそをかきだした。大声で泣きだしたら魔王が起きる……。とりあえず抱えて部屋の外に出るか?
「だけど、トイレに行きたくなったらひとりでいけないだろ?」
中等部の一番大きな子が小声で言った。
「うん、怖くていけない」
「そしたら、魔王を起こさないといけなくなるから、魔王ゆっくり眠れないぞ? いっぱい魔王を寝かせて、魔王が元気になったらみんなで一緒に寝るか?」
「うん! みんなで寝たい! そうする!」
半べそをかいてた子はなだめられると笑顔になり、俺は安堵した。眠っている魔王以外、魔王の寝室から出た。
その後は子らの寝る準備をする。入浴は食事前に全員済ませてあったらしいから、後は歯磨きをして寝かしつけるだけだ。歯磨きが終わると、中等部チームの三人は二階にあるそれぞれの部屋へ行った。初等部チームもそれぞれの部屋があるらしいのだが、最近はいつも三人同じ部屋で寝ているらしく、初等部メンバーのうちの、ひとりの部屋へ。残ったのは赤ん坊と幼児三人。
「執事、幼児と赤ん坊はどこで眠るんだ?」
俺は、執事に抱かれて眠っている赤ん坊を見る。
「普段は幼児の子供たちはわたくしと共に、赤ん坊はリュオン様の部屋で一緒に眠っております」
「じゃあ、俺が今日、赤ん坊と眠ればいいか?」
「でも、この子は数時間おきに起きるから勇者様のご負担になると思われます」
「いや、大丈夫だろ」
執事と話していると「勇者と寝たい!」と幼児たちがざわめいた。
「一緒に寝るか?」
「うん、寝たい!」
子らは、目を輝かせている。
「じゃあ俺が寝る部屋で、みんな一緒に寝るか? 執事、部屋まで案内を頼む」
「かしこまりました。では、勇者様に泊まっていただくご予定のお部屋をご案内いたします」
そうして俺が寝る二階の部屋には、幼児三人と赤ん坊、そして執事も一緒に寝ることになった。魔王城の部屋はひとつひとつ広い。準備してくれた部屋は、その中で特に広かった。そしてベッドも全員並んで横になれるくらい大きい。テンションが高く、部屋内を走り回ったりしてなかなか眠らない幼児たち。だが絵本を読んでいたら、これも能力のお陰なのか、無事に寝てくれた。
「ちょっと、食器を片付けたり荷物持ってきたり……色々してくる」
小声で執事に伝えるとダイニングルームへ行き、そのまま置いてあった食器をキッチンへ運ぶ。
洗い物が終わると、大きな鍋が視界に入った。
――そういえば、途中で寄った町で昼食を食べて以来、何も食べてないな。
食べ物について考えたからなのか、ちょうどタイミングよく腹がなる。まだ残っているかなと淡い期待を寄せながら鍋の蓋を開けてみると、食欲をそそる香りがするミルクのスープがまだ残っていた。皿に盛るとひとくち味見した。
――な、なんだこの味は!? 美味しすぎる。その味は、今まで食べてきた食べ物の中で一番美味しいかもしれない。
魔王が作ったんだよな……魔王は料理上手なのか。美味しすぎて鍋の中のスープ、約皿三杯分を完食してしまった。
その時「あっ……」と背後から声がした。
手伝ってはもらったが、トロッコから魔王を下ろすのに少し手間取った。ダイニングルームから近くて、魔王の寝室には一瞬でついたから、トロッコに乗せないで引きずっていった方が効率はよかったのか? いや、せっかく準備してくれたんだし、この方法でよかったよな。
魔王をベッドの上に乗せると、仰向けに寝かせた。そして布団をそっとかける。
「魔王、大丈夫かな?」
初等部の子が小さな声で俺に質問する。
「大丈夫だ、きっと。疲れてるからたくさん寝かせてやろうな」
「そうだね、魔王、またね」
会話をしながら部屋を出ようとした。
「わたち、魔王と寝たくなってきた」と、幼児チームの中で一番小さい子が半べそをかきだした。大声で泣きだしたら魔王が起きる……。とりあえず抱えて部屋の外に出るか?
「だけど、トイレに行きたくなったらひとりでいけないだろ?」
中等部の一番大きな子が小声で言った。
「うん、怖くていけない」
「そしたら、魔王を起こさないといけなくなるから、魔王ゆっくり眠れないぞ? いっぱい魔王を寝かせて、魔王が元気になったらみんなで一緒に寝るか?」
「うん! みんなで寝たい! そうする!」
半べそをかいてた子はなだめられると笑顔になり、俺は安堵した。眠っている魔王以外、魔王の寝室から出た。
その後は子らの寝る準備をする。入浴は食事前に全員済ませてあったらしいから、後は歯磨きをして寝かしつけるだけだ。歯磨きが終わると、中等部チームの三人は二階にあるそれぞれの部屋へ行った。初等部チームもそれぞれの部屋があるらしいのだが、最近はいつも三人同じ部屋で寝ているらしく、初等部メンバーのうちの、ひとりの部屋へ。残ったのは赤ん坊と幼児三人。
「執事、幼児と赤ん坊はどこで眠るんだ?」
俺は、執事に抱かれて眠っている赤ん坊を見る。
「普段は幼児の子供たちはわたくしと共に、赤ん坊はリュオン様の部屋で一緒に眠っております」
「じゃあ、俺が今日、赤ん坊と眠ればいいか?」
「でも、この子は数時間おきに起きるから勇者様のご負担になると思われます」
「いや、大丈夫だろ」
執事と話していると「勇者と寝たい!」と幼児たちがざわめいた。
「一緒に寝るか?」
「うん、寝たい!」
子らは、目を輝かせている。
「じゃあ俺が寝る部屋で、みんな一緒に寝るか? 執事、部屋まで案内を頼む」
「かしこまりました。では、勇者様に泊まっていただくご予定のお部屋をご案内いたします」
そうして俺が寝る二階の部屋には、幼児三人と赤ん坊、そして執事も一緒に寝ることになった。魔王城の部屋はひとつひとつ広い。準備してくれた部屋は、その中で特に広かった。そしてベッドも全員並んで横になれるくらい大きい。テンションが高く、部屋内を走り回ったりしてなかなか眠らない幼児たち。だが絵本を読んでいたら、これも能力のお陰なのか、無事に寝てくれた。
「ちょっと、食器を片付けたり荷物持ってきたり……色々してくる」
小声で執事に伝えるとダイニングルームへ行き、そのまま置いてあった食器をキッチンへ運ぶ。
洗い物が終わると、大きな鍋が視界に入った。
――そういえば、途中で寄った町で昼食を食べて以来、何も食べてないな。
食べ物について考えたからなのか、ちょうどタイミングよく腹がなる。まだ残っているかなと淡い期待を寄せながら鍋の蓋を開けてみると、食欲をそそる香りがするミルクのスープがまだ残っていた。皿に盛るとひとくち味見した。
――な、なんだこの味は!? 美味しすぎる。その味は、今まで食べてきた食べ物の中で一番美味しいかもしれない。
魔王が作ったんだよな……魔王は料理上手なのか。美味しすぎて鍋の中のスープ、約皿三杯分を完食してしまった。
その時「あっ……」と背後から声がした。



