「今日ね、佐藤くんと初めて一緒に帰ったんだ。思ってたよりいい人で、楽しかったなぁ」
ゆうくんにいつものように夜ご飯を一緒に食べながら今日の出来事を話す。
専ら友達に彼氏ができた、とか、体育で失敗した、とか、ゆうくんにとっては関係のない話をしているにも関わらず、いつもゆうくんは不快そうな態度を取らないし、適度に質問もしてくれるから、いつも楽しくて沢山伝えてしまう。
「そうか。でも、暗くなる前に帰ってきた方がいい」
ん?
いつもは言わない台詞に、少し違和感を抱きつつ、明日以降の予定も追加しておく。
「…そう?佐藤くんが送ってくれたから。それに、これから学園祭の準備があるから、今日より1時間くらいは遅くなると思うんだよね。まぁ、1週間くらいだけど」
学園祭は、来月の頭で、もう今月はあと1週間しかない。
早く帰れる仕事を選んで、昼休みに進める班に入っているから、当日までそこまで忙しくならない。
でも、さすがに最後の1週間は他の班との調整も兼ねて、放課後2時間作業することになっている。
「1人で帰るのは徒歩だから危ない。男子と帰るより女友達とかと、自転車かバスで帰った方がよっぽどいいだろ」
んんん?
「いや、うん。自転車持ってないんだけど、まぁ、バスは確かに。普段乗らないしたまには友達と一緒に帰ってもいいよねぇ」
同意しつつも、ゆうくんがハヤシライスを頬張る様子をしっかり見つめながら、葛藤する。
ゆうくんはまるでわたしに、暗くなってから1人、もしくは男子と一緒に帰って欲しくないと言っているように感じる。
それは、わたしを少なからず心配しているということだろうか?
中学生のときはもっと部活で遅くなっていても、何も言わなかったのに…、それに、別にわたしの安否とか正直興味なさそうなのに、わたしの下校プランまで考えるの?
「…ああ」
「じゃ、明日から少し遅くなるけどこっちには来るから」
まぁ、やたら人が急に優しくなるわけないし、話半分に受け取っておこう。
明日は誰と帰るか、一応考慮しておくとして、流石に家の近くまで乗るためのバス代は、女子高校生の懐に少し響くから、明後日以降は適当に帰ろう。
「もし、清水駅まで電車で帰るなら、そこまで迎えに行ける。1週間くらいなら問題ないから」
「…え!?」
今度こそ、声に出てしまう。
ついでにスプーンが音を立ててテーブルに転がった。
「…なんで、なんで?」
「え、暇だから?」
ゆうくんは、落とした食器を不思議そうに一瞥してから、わたしの目を見て言う。
いや、そういうことを訊ねたわけではない。
暇だから、とかでわたしを迎えに来てくれる労力や気分のことを知りたいの。
だって絶対今までじゃなかったことじゃん。
不思議だね…?
「その駅は車なら近いから。すぐだ」
わたしの伏せた目を見て何を思ったのか、ゆうくんは少し身じろいでぼそり、とつぶやいた。
ええ…。
「ありがとう、ゆうくん。めっちゃ大好き」
でもやっぱりわたしはゆうくんが何をしても、今のゆうくんも全て大好きだから、送ってくれる優しさを、わたしに見せるというなら、全力でわたしも好意にもたれかかってしまおう。
疑うのは好意を信じるなんて自惚れているのではないかって思って、勇気が湧かないだけだ。
疑うだけ期待もしてる。
なにかするから好きじゃなくて、そのままのゆうくんが好きだ。
いちいち、ゆうくんの行動にびっくりして大袈裟な顔していたら、ゆうくんもだる、って思ってしまうだろう。
「…そうか」
「…いつもね!」
ゆっくり笑ったわたしに対して、ゆうくんはじっとわたしのことを見るために、緊張させていた目元を少し緩ませた。
最近、考えるようになったけど、ゆうくんはいつも、表情になんの感情もない、ということがかなり少ない気がする。
常に、機敏に若干表情の切り替えをしていて、それが返事にまつわるわたしの気持ちを知ろうとしてくれているみたいで、大人だなぁと思う。
近頃は、ゆうくんが無表情なのは、あえてしているんだと解釈するようにしている。
やっぱり、ゆうくんは適当に返事してるわけじゃなかった。
わたしは所以とか察せないけど、多分それはあったかいものだ。
うん、優しいなぁ…。
ゆうくんにいつものように夜ご飯を一緒に食べながら今日の出来事を話す。
専ら友達に彼氏ができた、とか、体育で失敗した、とか、ゆうくんにとっては関係のない話をしているにも関わらず、いつもゆうくんは不快そうな態度を取らないし、適度に質問もしてくれるから、いつも楽しくて沢山伝えてしまう。
「そうか。でも、暗くなる前に帰ってきた方がいい」
ん?
いつもは言わない台詞に、少し違和感を抱きつつ、明日以降の予定も追加しておく。
「…そう?佐藤くんが送ってくれたから。それに、これから学園祭の準備があるから、今日より1時間くらいは遅くなると思うんだよね。まぁ、1週間くらいだけど」
学園祭は、来月の頭で、もう今月はあと1週間しかない。
早く帰れる仕事を選んで、昼休みに進める班に入っているから、当日までそこまで忙しくならない。
でも、さすがに最後の1週間は他の班との調整も兼ねて、放課後2時間作業することになっている。
「1人で帰るのは徒歩だから危ない。男子と帰るより女友達とかと、自転車かバスで帰った方がよっぽどいいだろ」
んんん?
「いや、うん。自転車持ってないんだけど、まぁ、バスは確かに。普段乗らないしたまには友達と一緒に帰ってもいいよねぇ」
同意しつつも、ゆうくんがハヤシライスを頬張る様子をしっかり見つめながら、葛藤する。
ゆうくんはまるでわたしに、暗くなってから1人、もしくは男子と一緒に帰って欲しくないと言っているように感じる。
それは、わたしを少なからず心配しているということだろうか?
中学生のときはもっと部活で遅くなっていても、何も言わなかったのに…、それに、別にわたしの安否とか正直興味なさそうなのに、わたしの下校プランまで考えるの?
「…ああ」
「じゃ、明日から少し遅くなるけどこっちには来るから」
まぁ、やたら人が急に優しくなるわけないし、話半分に受け取っておこう。
明日は誰と帰るか、一応考慮しておくとして、流石に家の近くまで乗るためのバス代は、女子高校生の懐に少し響くから、明後日以降は適当に帰ろう。
「もし、清水駅まで電車で帰るなら、そこまで迎えに行ける。1週間くらいなら問題ないから」
「…え!?」
今度こそ、声に出てしまう。
ついでにスプーンが音を立ててテーブルに転がった。
「…なんで、なんで?」
「え、暇だから?」
ゆうくんは、落とした食器を不思議そうに一瞥してから、わたしの目を見て言う。
いや、そういうことを訊ねたわけではない。
暇だから、とかでわたしを迎えに来てくれる労力や気分のことを知りたいの。
だって絶対今までじゃなかったことじゃん。
不思議だね…?
「その駅は車なら近いから。すぐだ」
わたしの伏せた目を見て何を思ったのか、ゆうくんは少し身じろいでぼそり、とつぶやいた。
ええ…。
「ありがとう、ゆうくん。めっちゃ大好き」
でもやっぱりわたしはゆうくんが何をしても、今のゆうくんも全て大好きだから、送ってくれる優しさを、わたしに見せるというなら、全力でわたしも好意にもたれかかってしまおう。
疑うのは好意を信じるなんて自惚れているのではないかって思って、勇気が湧かないだけだ。
疑うだけ期待もしてる。
なにかするから好きじゃなくて、そのままのゆうくんが好きだ。
いちいち、ゆうくんの行動にびっくりして大袈裟な顔していたら、ゆうくんもだる、って思ってしまうだろう。
「…そうか」
「…いつもね!」
ゆっくり笑ったわたしに対して、ゆうくんはじっとわたしのことを見るために、緊張させていた目元を少し緩ませた。
最近、考えるようになったけど、ゆうくんはいつも、表情になんの感情もない、ということがかなり少ない気がする。
常に、機敏に若干表情の切り替えをしていて、それが返事にまつわるわたしの気持ちを知ろうとしてくれているみたいで、大人だなぁと思う。
近頃は、ゆうくんが無表情なのは、あえてしているんだと解釈するようにしている。
やっぱり、ゆうくんは適当に返事してるわけじゃなかった。
わたしは所以とか察せないけど、多分それはあったかいものだ。
うん、優しいなぁ…。

