「…ゆうくん。幽霊とか信じる?」
「信じねぇな。うん」
今日は午前中まで学校があって、その帰りにゆうくんちに寄って、掃除機をかけるゆうくんに言った。
ごくごく真剣な顔で言ったというのに、ゆうくんは一度手を止めると、より真顔になった。
「あのね、私部活の子と一緒に旅行行くでしょ?今度の三連休!そこで泊まる所がさぁ、心霊スポットとしても有名な民泊なんだよ…。いや、霊感なんて感じないタイプだと思うけどさぁ、もしかしたら会えちゃうかも知れないでしょ、座敷童子さんに!そばの別館にいるみたいだけど、どうしようかなぁって」
友達の友達の家族が民泊を経営しているようで、ちょっとした旅行に誘ってもらった。
行くのはお城と美術館が有名な都会の観光地。
おまけでついていく私は、久しぶりの遠出になるから、わくわくしている。
あと数日で、ゆうくんと数日別れるのは本当に悔しいけれど、友達からのお誘いだし。
朝から夜まで沢山お話しできるなぁ、とか、お土産とか、結構楽しみにしている。
「へー。どこ」
わたしの早口攻撃に呆れたゆうくんはついに掃除機を壁に立て掛けた。
そしてキッチンに行った。
「あそこだよ!昔の家をリノベした、安いし泊まってみたいって前に言ったとこ。まさか杏ちゃんのお友達のおばあちゃんがやってたなんてびっくり」
わたしはリビングにとりあえず荷物を置いて、キッチンの外から話続ける。
多分ゆうくんは興味ないだろうな、と思いつつも予定を知って欲しくて。
「行かない方がいいな、…別館」
何かをレンジで温めながらゆうくんが呟いた。
「そっかぁ。まぁ、大丈夫だと思うけどねぇ。行かないのがいいよねー」
ゆうくんは結構幽霊だめなのだろうか、と少し意外に思う。
キッチンでいろいろ動くゆうくんをじっと見ていると、「まあ、知らないが。おれは信じない」
と言う。
うん、そうだろうな。
「ふーん、わたしがいないときに幽霊来ても驚かないでね。多分わたしの生き霊だから」
無言でゆうくんはわたしをスルーして、リビングに来ると、テーブルにコップを置く。
今日はなんだか可愛いマグカップを使ってるなー、と思ったらわたしのだ。
ゆうくんはいいのかそれで。
わたしが普段使ってるやつで。
「だから明後日の7時には杏ちゃんちに行くね。楽しみだけど、しばらく会えないの本当つらい」
「ああ。あとそれ、いつもの」
え?
テーブルに近づくと、わたしがそのマグカップの液体が、わたしがいつも飲んでるココアだった。
湯気が立ちのぼって、いい匂い。
「これ、ま、まさか、わたしのでしょう!!!」
わたしのために、作ってくれたの、ゆうくん…!?!?
思わず、ココアとゆうくんを見比べてしまう。
仏頂面のゆうくんは涼しげだ。
でも、こんな優しいことをする今のゆうくんは、いつもより人間ぽく見える。
素敵すぎる…
「美味しそう…!えっ、飲んでいい?」
無言で促すゆうくん。
はやる気持ちをそのままに、カップを持つと、立ったまま少し飲む。
すると、少しいつもよりおいしいことに気がついた。
優しい、胃に馴染む、とっても、どタイプの味。
ゆうくんに向き合ったまま、過激に称賛したい。
そうだ、せねば!!
「おいしい…!!ねぇ、美味しいよ、ゆうくん!ココアもゆうくんもどっちも大好き。わたし、死ぬ前の走馬灯に間違いなくこれ出てくるよ。本当にありがとう…。」
う、涙が滲み出てきた。
数秒でだばだはと涙の粒が顔中に溢れていくわたしを見たゆうくん。
戸惑った顔で、珍しく首を傾げた。
「そんなことか…」
うふふふふ、とわたしはマグカップを抱きしめながらその味を噛み締めた。
ゆうくんはやっぱり甘い。
わたしにはやく自立しろとでも言えば、きっとやめられるのに。
いや、今更やめられるわけないか。
ごめんね。ゆうくん。
帰り道、普通に歩いて帰ったけど、兎跳びでも余裕なくらい気力が有り余っていて、ターンして玄関のドアを開けた。
ただいま、と言った自分の声があまりにも喜色で少し引く。
「信じねぇな。うん」
今日は午前中まで学校があって、その帰りにゆうくんちに寄って、掃除機をかけるゆうくんに言った。
ごくごく真剣な顔で言ったというのに、ゆうくんは一度手を止めると、より真顔になった。
「あのね、私部活の子と一緒に旅行行くでしょ?今度の三連休!そこで泊まる所がさぁ、心霊スポットとしても有名な民泊なんだよ…。いや、霊感なんて感じないタイプだと思うけどさぁ、もしかしたら会えちゃうかも知れないでしょ、座敷童子さんに!そばの別館にいるみたいだけど、どうしようかなぁって」
友達の友達の家族が民泊を経営しているようで、ちょっとした旅行に誘ってもらった。
行くのはお城と美術館が有名な都会の観光地。
おまけでついていく私は、久しぶりの遠出になるから、わくわくしている。
あと数日で、ゆうくんと数日別れるのは本当に悔しいけれど、友達からのお誘いだし。
朝から夜まで沢山お話しできるなぁ、とか、お土産とか、結構楽しみにしている。
「へー。どこ」
わたしの早口攻撃に呆れたゆうくんはついに掃除機を壁に立て掛けた。
そしてキッチンに行った。
「あそこだよ!昔の家をリノベした、安いし泊まってみたいって前に言ったとこ。まさか杏ちゃんのお友達のおばあちゃんがやってたなんてびっくり」
わたしはリビングにとりあえず荷物を置いて、キッチンの外から話続ける。
多分ゆうくんは興味ないだろうな、と思いつつも予定を知って欲しくて。
「行かない方がいいな、…別館」
何かをレンジで温めながらゆうくんが呟いた。
「そっかぁ。まぁ、大丈夫だと思うけどねぇ。行かないのがいいよねー」
ゆうくんは結構幽霊だめなのだろうか、と少し意外に思う。
キッチンでいろいろ動くゆうくんをじっと見ていると、「まあ、知らないが。おれは信じない」
と言う。
うん、そうだろうな。
「ふーん、わたしがいないときに幽霊来ても驚かないでね。多分わたしの生き霊だから」
無言でゆうくんはわたしをスルーして、リビングに来ると、テーブルにコップを置く。
今日はなんだか可愛いマグカップを使ってるなー、と思ったらわたしのだ。
ゆうくんはいいのかそれで。
わたしが普段使ってるやつで。
「だから明後日の7時には杏ちゃんちに行くね。楽しみだけど、しばらく会えないの本当つらい」
「ああ。あとそれ、いつもの」
え?
テーブルに近づくと、わたしがそのマグカップの液体が、わたしがいつも飲んでるココアだった。
湯気が立ちのぼって、いい匂い。
「これ、ま、まさか、わたしのでしょう!!!」
わたしのために、作ってくれたの、ゆうくん…!?!?
思わず、ココアとゆうくんを見比べてしまう。
仏頂面のゆうくんは涼しげだ。
でも、こんな優しいことをする今のゆうくんは、いつもより人間ぽく見える。
素敵すぎる…
「美味しそう…!えっ、飲んでいい?」
無言で促すゆうくん。
はやる気持ちをそのままに、カップを持つと、立ったまま少し飲む。
すると、少しいつもよりおいしいことに気がついた。
優しい、胃に馴染む、とっても、どタイプの味。
ゆうくんに向き合ったまま、過激に称賛したい。
そうだ、せねば!!
「おいしい…!!ねぇ、美味しいよ、ゆうくん!ココアもゆうくんもどっちも大好き。わたし、死ぬ前の走馬灯に間違いなくこれ出てくるよ。本当にありがとう…。」
う、涙が滲み出てきた。
数秒でだばだはと涙の粒が顔中に溢れていくわたしを見たゆうくん。
戸惑った顔で、珍しく首を傾げた。
「そんなことか…」
うふふふふ、とわたしはマグカップを抱きしめながらその味を噛み締めた。
ゆうくんはやっぱり甘い。
わたしにはやく自立しろとでも言えば、きっとやめられるのに。
いや、今更やめられるわけないか。
ごめんね。ゆうくん。
帰り道、普通に歩いて帰ったけど、兎跳びでも余裕なくらい気力が有り余っていて、ターンして玄関のドアを開けた。
ただいま、と言った自分の声があまりにも喜色で少し引く。

