ゆ・る・オ・リ

「好きなことがなかったら?将来、ただ平和に過ごせたらいいなって思ってしまったら?」
「つまり、なそでいちゃんには夢がないのね?」
「…うん…どうしたら見つかるのかな…?」
「きっと自然と見つかるわ。今はなくとも、そうね、中学生くらいにはできてるわよ。」
先生の一言でほっとした。そのくらいになれば、きっと、空からふってくるように、すっと見つかるんだ、と思った。
私には保育園の友だちが数人いた。心の底からきちんと友だちと言えるか分からないけど。そんな子たちと、ある日会話をしていた。
1人の子が、大きくなったら、パティシエになりたいとしゃべりはじめた。
理由は、ケーキが好きだからだそうだ。もう1人の子は、お医者さんになりたいと言った。
お父さんがそうだからだそうだ。そして最後の1人は、イラストレーターになりたいと言った。お絵描きが得意だからだそうだ。いよいよ、私の番になった。
3人とも、ワクワクした表情で、私を見つめる。
「私は特定のものになりたいとかじゃない。ただ、平和に暮らせたらいいなって、思ってる。」
この言葉に、一気に3人の表情が暗くなった。