まだ誰も知らない恋を始めよう

「僕についての噂? ……何でしょう?
 教えて貰えますか。
 人と喋るのは久しぶりなんです」

「貴方が行方不明、って噂があるらしいです。
 ……あの、わたしから言い出したのに、ごめんなさい。
 わたしも友人から聞いて、それだけしか知らないんです。
 どういう訳で、そんな噂になっているのか興味があるなら、これから一緒に彼女に会って、くわしく聞きに行きませんか?」


 人と喋るのは久しぶり?
 彼のその言葉に、引っかかったけれど。
 とりあえずはステラのところに行こうと誘う。


「あー、どうだろう……
 ご友人が素直に僕に話してくれるとは思えないんです。
 あの、しつこいようだけど、マッカーシー嬢には僕が見えているんですよね?」

 え、何なの?
 この見える云々の確認、3回目よ?
 でも、さすが王子様だ、わたしに嬢を付けて呼ぶなんて、父の関係者からしか言われたことは無い。


「呼び捨てていいですよ、言葉遣いも崩してくださって結構です。
 わたし達同じ学年だし」

 大学の同級生は男女関係無く、姓を呼び捨てにするのが多い。
 先程は家名に嬢をプラスしてくれたけれど、わたしは高位貴族のご令嬢じゃなくて、経済的にも庶民派なのですよ。


「そう? じゃ、普通に話させて貰おうかな。
 君も僕のことも、フィンと呼んで欲しいな」

 えぇ、愛称を呼んで、って言ってる!?
 うーん、これはこれは……
 このひとが男女問わず友人が多いのは当然だな。
 少し話しただけで、王子様の方から距離を縮めてくれるんだから、そりゃ誰だって嬉しくて好きになる。

 それなら、まぁここは別に意地張るところじゃないし、わたしも愛称で呼ばせていただこうかな。