まだ誰も知らない恋を始めよう

 だけど今度はダニエルが、落ち込みかけた俺の手を握ってくれた。


「謝らないで、わたしも父の仕事については詳しく教えて貰ってないの。
 だから中途半端に、家庭の事情を貴方に言いたくなかったし。
 でもね、あの時言った『父が夢ばかり追ってる』のは本当の話だし、経済的に苦しいのも本当。
 国から与えられた今の仕事を、父は楽しんでて、子供の頃の夢だった悪者退治を行う正義の勇者になってるつもりなの」

「正義の勇者……」


 彼女の父上は、もしかして俺達一般人には知る事もない世界の果てで。
 その持てる能力を使って、極悪非道な大魔王と戦っているのか?

 その種の冒険譚なら何冊も読んでいて、俺だって勇者になりたかった。
 俺だけが持てる特別な力、そんなのを持ってたら、男なら誰だって、決戦の舞台に……
 世界征服を目論む大魔王、毒の火を吹くドラゴン、囚われのプリンセス……