まだ誰も知らない恋を始めよう

「彼女は夫人が目にかけていたメイドだったから、夫人本人が入れるように頼んだ特別な香料かシロップか、と思って。
 それで特に何も考えず、お茶を配り終えた彼女にお願いした。 
 おばさまのカップに入れたのと同じ物を、わたしにも入れてくださる? って」


 わたしは子供だった。
 深く考えずに、わたしだけが貴女のした事に気付いたと、指摘したくて。
 皆の前で淑女を気取って大人ぶった口調で、わたしにも入れてくださる、と強請って、少しだけ彼女を困らせたかった。

 何故なら、ニールがメイドの彼女に惹かれているを知っていたから。
 彼女に対する幼い妬みでいっぱいだったわたしが、人の悪意が読める力を、この時に発現させたのは皮肉としか言いようがない。


「パーキンス夫人は立ち上がって、わたしにどういうことか、尋ねた。
 わたしは、おばさまだけに入れた特別なお茶を、わたしも飲みたいです、とあざとく強請った。
 母は無言で青い顔をしていて、ニールはわたしを睨んで、こいつは嘘を付いてる!って夫人に訴えた。
 彼は彼女を助けたくて、リリィは何もしていない、と必死だった。
 どうして分かったのか、何か見たのか、何度も夫人に確認されたけれど、大きな騒ぎになるとは思わなくて、わたしは混乱してた。
 でも否定するリリィの動揺した様子に、夫人が代わりに飲むように命じたら、彼女は泣きながら認めたの。
 子爵の従姉にお金を渡されて、妊娠中の奥様に堕胎薬を盛リました、って」