まだ誰も知らない恋を始めよう

 アイリーン・シーバス教授の教えを受けたくて、史学部を選んだわたしなので、今日はすこぶる気分が良い。 
 今日までレポート返却や学会提出論文の資料集め等、自ら手を挙げて教授に雑用のお手伝いを申し出て。
『わたしは役に立つ女です』とコツコツとアピールし続けてきた甲斐があった。
 それを同じ学部のステラに自慢する前に、こんな事になってしまったけれど。 


 まぁ、シーバス調査隊の話はいつでも出来る。
 今は取り敢えず、ペンデルトンだ。
 早くステラの驚く顔が見たい。
 そして反対に、言ってやろう。
「嘘でしょ、見えなかったの?信じられな~い」って。

 ……なんて、きっと言えないけど。
 わたしは平和を守る女だから。


 これから第3カフェテリアに向かう庶民の間をすり抜けて、王子様は軽やかに進むが、同じく庶民派のわたしと言えば、逆行する彼等に何度もぶつかりかけて
「ごめんなさい、通してください、すみません」と繰り返し謝りながら追いかけた。
 そんな苦労を経て、ようやく西棟を出て中庭に向かうペンデルトンに追い付き、後ろから声を掛けた。


「はぁあペッ、ペ……ペンデルトンさん…… はぁ……」