まだ誰も知らない恋を始めよう

 それに、そんな事(友達が少ない、情報に疎いとか)で傷付いたなんて、思われたら……ちょっと悔しいし。 
 お前は何様目線で言ってるんだと嗤われるだろうけれど、わたしは友達を選んでるだけ。
 そう自分にも言い聞かせて、改めてステラに向き直れば。


 えーっ、何で!?
 ポーズだけまだ可愛くごめんなさいをしているステラの背後5メートルくらいのところを、通り過ぎていくフィニアス・ペンデルトンが見えた!


「ステラ! 後ろ! 後ろっ!」

 焦って、腰を上げて、カフェテリアのテーブルを挟んで真正面に座るステラの肩を掴んだ。
 

「え、何……」

 わたしの勢いに驚いたステラは後ろを振り返ったが、また直ぐにわたしに向き直って。


「後ろ、って何?」

 えっ、まさか気付いてないの?
 確かに真後ろはもう通り過ぎた後だけど、ステラが身体をひねった方向からはペンデルトンの後ろ姿は見えたはず。
 現にわたしからは今も彼の後ろ姿は見えている。

 ただその姿に違和感を感じたのは、誰も彼に近付いて行かないことだ。
 わたしがこれまで構内でペンデルトンを見かけた時には、いつだって彼の周りには男女問わずに友人達が居た。
 今日みたいに1人で第3カフェテリアに現れるなんて、初めて見た。


「ペンデルトン、行方不明だっていう、フィニアス・ペンデルトンが!
 ほら、歩いてる! ほらっ!」

 わたしは、カフェテリアを出ていく彼を指差した。
 ステラは、その指先を辿って視線を向けていたので、絶対にペンデルトンの後ろ姿が見えたはずなのに。
 彼女は笑いながら、こう言った。


「ねぇ、誰かと見間違えてるんじゃないの?
 庶民専用の第3にフィニアスが居るわけない。
 その古い眼鏡、視力合ってないと思うよ。
 新しく買い換えたら?」