まだ誰も知らない恋を始めよう

 その結果、アイリーンは内通者だったガイドに騙され、かの国の官憲に逮捕された。
 あえて外務者に連絡しないアイリーンの逮捕はドナルドに知られることはなく。
 彼女は己の罪が軽くなるのなら、と司法取引に応じて、夫とオークション仲間を売った。 
 兄が話した通り、国の重要文化財に手を出した外国人への刑罰の重さを、アイリーンは知っていたからだ。

 大学からアイリーンの姿は消え、王都大のスター教授の犯罪はマスコミを賑わしたけれど、それも直ぐに次のスキャンダルに駆逐されて、今では誰も彼女の事を思い出さない。


 こうして兄は外務省への出向を終え、報奨として、今は希望通り魔法庁での内勤事務職になった。
 
「赤毛が送ってくる報告書を、書き直してくださいと差し戻すのが、めちゃくちゃ楽しい」らしい。
 兄こそが、無慈悲な私生活優先男だったとは……