まだ誰も知らない恋を始めよう

「わたしがベッキーさんに騙された、って言うの!?」

「そーだよ、多重魔法の解術後に記憶喪失?
 そんなん知らん! 有りえね!」

「そんなの、君が知らないだけでしょ!」

「あのさぁ、俺もね、いちおー、多重魔法の解術については図書室で何冊も調べてたの!
 こう見えても、連れて来いって言ったからにはちゃんとする、と決めてたし。
 その俺が言ってんだよ、何? 過去の文献って?
 あの赤毛のベッキーに、そんなの読む時間あるかよ。
 俺から見ても無茶苦茶忙しい人なんだからな」

 ちょ、ちょっと、待って!
 あの時、真剣な目をして、少し暗めの表情で、ベッキーさんはわたしに言ったよ!?


「言いたい事は伝えないと、後悔しますよ」と。

 あれは嘘?
 それを信じたわたしは何をした!?
 告白をした!
 フィニアス・ペンデルトンに、好きだと告白した!

 動揺する余りに口に出していたようで、目の前のオルくんがニヤニヤしていた。


「へー、やるじゃん、お姉さんも、師匠も。
 両片想いっていうやつは、傍から見ても1番イラつくからさぁ。
 いい加減にしろ、って騙されたんだよ。
 あの人、そーゆーとこ、あるから」

 ソーユートコアルカラ……ソーユー、アル!?

 
「……騙された? ……あんな緊迫した場面で?」

「師匠からしたら、メイトリクスを捕まえるなんて楽勝だし、緊迫も何も無いでしょうが。
 お姉さんが黙っていたら、次はお兄さんをつついたんじゃない?」

「……」