まだ誰も知らない恋を始めよう

 オルくんはわたしの顔を見て顔を歪ませたけれど、わたしから彼に会いに来た訳じゃない、むしろ会いたくなかった。
 それなのに顔を合わせてしまったのは、彼がシーズンズに来たからだ。
 それも、ジェリーが模試でシフトに入っていない日に。

 まぁ、彼からしても、わたしに会いたくはなかっただろうに、土曜日のシフトを終えて従業員入り口を出たところで、会ってしまった。

 掃除夫のヒューゴさんに、じぃじ、と呼び掛けて、甘える彼に。

 それを見てドアノブに手を掛けたまま固まるわたしに気付いたオルくんは、ヒューゴさんに見せていた、それまでの汚れの無いピュアな笑顔を捨て、わたしを睨んだ。


「何だよ、ジロジロ見るなよ、裏切り者」

「裏切り者って何だ、君はヒューゴさんの孫だったの?」

 わたし達の殺伐とした雰囲気と会話にヒューゴさんが笑い出した。


「孫じゃないけど、孫みたいなもんだ。
 2人が知り合いだったとはな」

「ジェリー」「ディナ」
「「に、紹介されて」」

 綺麗にユニゾンになったよ、勘弁して。


「これからオルと飯を食べに行くが、ダニエルも一緒にどうだ?」