まだ誰も知らない恋を始めよう

「あのさぁ、それって、あのオバハンに引っ掛かったんじゃねぇの?
 素直に騙されちゃって、あんた馬鹿?」

 そんな風に口汚く、ベッキーさんを『あのオバハン』、わたしに向かって『あんた馬鹿?』と罵ったのは、あのいけ好かないクソガキ、オルシニアス・ヴィオンだ。

 彼の中では、わたしは、外れを探すヒントを盗んでまでして渡してやったのに、それに応えない恩知らずな馬鹿で。
 養母で師匠のベッキーさんは、俺様の獲物を横から掻っ攫いやがったオバハンなのだ。




 魔法学院を訪れない限り、もう2度と会わないだろうと思っていた相手と再会した。 
 目が合うなり、それまでの表情を変えて、不機嫌な顔をわざと見せる。
 相手によって態度を変えるとは、本当に小憎たらしい。


 前回にも増して、わたしに対しての当たりがキツいのは何故なのか、その理由は分かっている。
 自分がジャック・メイトリクスを喰えなくて、変身魔法を手に入れられなかった八つ当たりだ。

 天才と呼ばれているなら、危険な真似はせずに、地道にコツコツ勉強して手に入れなさいね、と年上のお姉さんは言ってやりたい……言わないけど。
 魔力無しのわたしが言うことじゃないね。
 きっとベッキーさんに、何度も何度もそう戒められているはずだから。