まだ誰も知らない恋を始めよう

   ◇◇◇


「以上がジャック・メイトリクスの自供部分ですが、あくまで本人目線ですから、事実との齟齬は、あるかもしれませんが」

「……いや、これ以上は充分だ。
 カレラの物欲や名誉欲がきっかけなら、それを増長させたのは、父と私だ。
 君が事の真相を妻や父や息子に話すのは私に任せると言うのなら、私は知らせない。
 3人が死んだカレラのために流した涙はまだ乾いてないんだ……
 本当のあいつを教えなくても良いだろう」

 そう言いながら、ペンデルトン氏はいち早く帰ろうとした。
 事の顛末の真実を、自分1人の胸に納める、と決めて。
 

「もし私の証言なりが必要なら、連絡してくれ。
 私は気を落ち着かせたいから、歩いて帰る。
 レディ・アリアとダニエル嬢は、うちの車を使ってください。
 それじゃ、今回は世話をかけたな、ベッキー」

「あぁ、さよなら、ザカリー」 


 それが、20年振りに顔を合わせたお2人のお別れの言葉だった。


 こんな風に、人は簡単に離れていける。

 きっと、わたしとフィンも。