まだ誰も知らない恋を始めよう

「そんな理由なら、フィンでなく、誰が社長になっても、あいつは満足出来ないはずだろ!?」

「希望通りにフィニアスさんを排除した後をカレラさんがどうしたいと思っていたのかは、彼女が亡くなった今では、知る術はありません」


 ペンデルトン氏が口にしたのは当然の疑問だが、カレラさんの思惑を推察するのは、魔法士の仕事ではないとベッキーさんははっきり告げたようなもの。
 彼女は親切な人だが、同時に無慈悲な一面も持ち合わせていて、それを隠さない。

 今にも倒れそうな顔色のペンデルトン氏を横目に見て、ベッキーさんは話を続けた。


「依頼を受けたメイトリクスは最初は女性に変身してフィニアスさんを誘惑する予定でしたが、アイリーンから買った例の古代魔術の指南書を読んで、気が変わりました」

「それが、身体を消す魔法やその他の?」

 叔母の問いに、ベッキーさんが頷く。


「日曜夜のパーティーから出てきたフィニアスさんの跡を付けて、離れた場所から魔法を重ねて掛けました。
 その後はダニエルさんの推察通り、秘本に記されている通りになるのか、それを見届けようとして、ペンデルトン家の周辺を探り、マーレイ・アボット氏を見つけたのです」