まだ誰も知らない恋を始めよう

 一方の謝罪された方のダニエルは、ロジャーには何も言わなかった(結構怒っていたんだと思う)が、側に付き添うステラには、ちゃんと話したいと言って、2人がいなくなってからは、その後は無言で何か考えていた。


 ロジャーを見送り、皆がそれぞれの持ち場に戻って行き、俺とダニエルの側にレディ・アリアと、髪を染めて、まるで別人に見えるベッキーさんが近寄ってきた。


「目の前のペンデルトンさんよりも遠くに座っていたあの男の方が、メイトリクスの臭いをさせている気がしたのよ。
 それを伝えようとしたのに、ダニエルがさっさと出て行っちゃうから」


「あの男と何か、あったんですね?
 ……それで? 貴方が彼女を守ったの?
 フィニアスさん?」

 2人から、ほぼ同時に声を掛けられたダニエルが隣の俺を見上げた。


「御礼が遅くなってごめんね。
 皆さんが集まってきたから、話せなくて。
 守ってくれてありがとう、嬉しかった。
 抵抗も出来ないくせに、ロジャーを煽って怒らせたの」

 彼女に御礼を言われたら、誓いを破った甲斐もあったと言うもの。 


「君が煽ったのは、あいつが何か言ったからだろう?
 我に返って、謝ってたね?」 

 その問いかけに、ダニエルが頷く。


「え、ファニアスさんが隣に居るの?」 

「えぇ、わたしには姿は見えないし、声も聞こえませんが、彼の気配は感じるんです」

 俺の声が聞こえないレディ・アリアが声を潜めて、ベッキーさんに尋ねている。