まだ誰も知らない恋を始めよう

 2人の会話が上に居る俺に、聞こえはしない。
 何がどうなって、そうなったのかも理解していなかった。

 でも、2階から見下ろした廊下では、ダニエルに迫ったロジャーが見えた。

 咄嗟に傍らに飾られていた花瓶に手が伸びた。




 夕食会の開始よりも、他の客よりも、彼女が早く来るとは聞いていた。
 うちの使用人達の中に、メイトリクスが紛れ込んでいないか、確認するためだ。

 
 大人しく自分の部屋で待機しているように厳命されていたのに、俺は部屋を出て、階下の様子を2階の廊下から伺っていた。

 使用人達に会った結果が気になったのは事実だが、1番はダニエルに会いたかった。
 何処にメイトリクスが潜んで居るか分からない状態のこの家で、俺がウロウロしてはいけないのは、理解していたけれど。
 到着した彼女達が入っていった応接室を伺っていた(覗き、とは自分では認めたくない)。