まだ誰も知らない恋を始めよう

 けれど、先週金曜日のスプリング・ウィークが始まる前までは、フィンとは無関係だったのは、ちゃんと伝えようと思う。 


「マッカーシー嬢! お待ち下さい!」

 それだけでも伝えたい、と焦るわたしを呼び止める声がした。

 ロジャー・アボットだった。


   ◇◇◇


 彼は急に出て行ったステラを追い掛けて来たのだろう。


「こんな形で挨拶するのは、あれだけだけど。
 君はステラの友人だったよね?」


 さっきはわたしを不思議そうに見ていた赤い瞳がわたしを見て、細められた。


「いつもステラから君の事は聞いていたんだ。
 だから初めましてだけど、初めて会った気がしないな、でも、とりあえず。
 初めまして、ロジャー・アボットと申します」

「いえ、こちらこそ、ご挨拶が遅れてしまって……
 ダニエル・マッカーシーと申します」

「いや、それはお互い様だからお気になさらずに。
 伯母の勢いが凄かったからね、なかなか口を挟めなかったよね」


 そう言って笑うロジャーの人当たりの良さは、血が繋がっていないとは言え、フィンに共通するものだ。
 ルックスも良いし、ステラが自分から告白する位に彼に夢中だった理由がよく分かる。