まだ誰も知らない恋を始めよう

「この家の使用人には居ない、ですね」

「だと思いました。
 怠惰なあの男が、わざわざ労働階級に変身するとは思えません」


 これで彼等は解散で、それぞれの仕事に戻る。
 大して重要でもない初見の客を全員で出迎えると言う、訳が分からない執事長の指示に、しばらく皆であれこれ推察するんだろうな。
 でも、彼等の仕事場を回るより、まとめてチェック出来て、話が早い。


 ベッキーさんだけではなく、叔母からも同意を得られたので、サミュエルさんに目線を送ると頷かれ、そのまま一昨日とは違う応接室に案内される。
 

「今日は、珍しくロジャー様がご両親とは別に、先にいらしてまして。
 旦那様と奥様とご歓談中です」

 ロジャー・アボット!
 すごく気になっていた彼とは、昨日お休みで会えなかった。
 そのロジャーがもう来ているなんて、これはじっくり彼の人柄が兄の言った通りか、知れるかも。


「わたくし達が1番乗りかと思っていたんですが」

 叔母が普段より、お上品にサミュエルさんに話を振る。
 わたしが気にしていたロジャーに会う前に、少しでも情報を引き出そうとしているのかな。