まだ誰も知らない恋を始めよう

 まるでそれが当然の事のように、フィニアス・ペンデルトンは帰宅するわたしに、そのまま付いてきた。

 バス乗り場は大勢の学生達で混み合っていて、何も言えなかったわたしだが、バス停から徒歩20分弱の我が家までの道のりは2人だけ。
 ようやく人目を気にすること無く、彼と話すことが出来る。


「あ、ここからも歩くんだ」

「そうですよ、路線バスは家の前には横付けしてくれませんからね」

 バスを降りても、王室御用達ホテル御曹司の王子様発言は続き、庶民のわたしはつい嫌味な物言いをしてしまう。
 


「オムニバスって生まれてこのかた、乗ったこと無いんだ、うわ、楽しみ」


「え、2階はもう無理なの!?
 1階でも全員座れないんだ? 立ったまま?」


「これだけ全部のバス停に停まってたら、時間がかかるのも無理ないね?
 ずっと立ってるから、いい運動にはなるかな」

 なんて、2階建てオムニバスに乗る前からはしゃぎ気味だった彼はテンション高めで、車内で隣に立つわたしの耳元で囁き続けた。
 そんなフィンの王子様ぶりは、わたしを苛つかせたけれど。

 それと当時に、恵まれた環境で何不自由なく過ごしてきたであろう彼がその立場故に、好きなようには過ごせてなかったのだ、とも伺えた。
 上流階級に属する彼は、わたしなんかより窮屈な思いを抱えて生きてきたのかもしれない。 
 
 それで、少しは同情する気持ちも湧き上がってきて。