まだ誰も知らない恋を始めよう

 安堵するあまりに、その場でカーペットの上に座り込んだわたしを、叔母が見下ろしていた。


「じゃ、他には?
 フィニアスさんの周囲に、嫌な悪い心を持つ奴は居た?」


 嫌な奴だったら、ペンデルトン夫人の侍女が居たけれど。
 フィンやペンデルトン氏に対しては何の含みも読み取れなかった。 

 夫人に対しては、少し複雑なものを持ってるなと感じたけれど、それは割とよくある、心配を装った嫉妬の様な感じで、恵まれた同性に向ける他愛のないもので。
 それに、あれだけ見事にペンデルトン氏に立場を明確に突き付けられれば、これからはそんな想いも消す努力はするだろう。

 同様にわたしが向けられたのは、裕福な男性に愛される貧乏女がただただムカついてだし。
 叔母から教えられたメイトリクスが抱える歪な感情は、そんな単純なものじゃない気がするから、彼女では無いと思う。


 それを伝えると、見上げた叔母の表情が曇った。


「……んー、となると、ダニエルが会ったはずだと思ったのに、わたしが間違ったのかな。
 確かに、微かに臭うだけだし、本人に会わなくても、あれほどの悪臭なら間接的にでも臭いが残る事もあり得るか……」

「アリア叔母様?」

「……ごめんね、わたし間違ったかも知れないわ。
 貴女、メイトリクス本人とは接触してないかも」