まだ誰も知らない恋を始めよう

「……うん?」

 あのペンデルトンが行方不明、の噂。
 それはもう聞いた。
 何度も繰り返すのは、相槌を打つ以外に何か言え、ってこと?
 しかし、今わたしの口内はレタスで占められて、これを食べ終わるまでは話せないんだよ。
 それが食事のマナーだもの。


 それにしたって、ステラがわたしの顔を凝視しているのはどうしてだろう?
 もしや、わたしがペンデルトンの行方不明に関与しているとでも疑って、反応を確認している?


「わたし、彼の行方不明には全然関与してないよ!」

 焦ってレタスを嚥下して、取り敢えず否定した。
 あぁ、まずいんじゃない?
 こんなに強く否定したら、ますます怪しく見えるのに。
 小説で名探偵に詰め寄られた真犯人がよくやる失敗だ。

 きっとこんな反応も、目の前のにわか探偵には疑わしく映っているのに違いない。
 これで『証拠はあるのか』等と開き直ったりしたら、わたしは犯人確定だ……ところが、名探偵ステラは可笑しそうに笑い出した。


「何言ってんのよ、当たり前じゃない。
 あなたとフィニアスに、何の関係も無いのは分かってるわよ。
 わたしはただ友達が少なくて情報に疎いダニエルにも、この噂が届いているのか、確認しただけ」

 ステラがおかしそうに笑っている。
 疑われていなかった……その事に、喜ぶべき?
 それとも、その『友達が少なくて情報に疎い』は、わたしを馬鹿にしてる?って聞き返すべき?


 ……まぁね、ステラが笑うのも、納得はしますけどね。
 何せ、フィニアス・ペンデルトンはわたしとは対局に居る。

 分かりやすく言えば、彼は一般的 (より貧乏な感じ) な苦学生であるわたしとは住む世界が違う、リッチな王子様だから。