まだ誰も知らない恋を始めよう

 だがそのまま乗っているしかなくて、お客様に合わせて俺も5階で降り、廊下突き当たりの階段で7階まで上がった。

 
 企画部や総務部等の各部署のオフィスが並ぶ長い廊下の先に社長室がある。
 丁度、秘書のバーグマンが出てきたのが見えたので、彼が秘書室に戻るまで待機してから入った。

 前にここへ来たのは、いつだったか、覚えていない。
 俺がドアを開けて入ってきても、父はこちらを見もせずに、手にした書類を睨んでいる。

 父が座るデスクに近付いた俺は、天板を1回叩いた。
 父が顔を上げ、辺りを見回す。


「フィニアス、お前か?
 バーグマンが追加書類を持ってきたのかと思った」

 コツン、とまたも1回叩くと、父は新品のノートとペンを取り出してきた。



「20分後に打ち合わせがある。
 それでも、今がいいか?」

 俺は今度は叩かず、ノートに文字を書いた。


─ 母さんには知られたくない話だから、ここで手短に済ませたい

「分かった、何を話しに来た?」

─ 助けてください

─ 魔法士を雇って欲しい

「魔法士? 」

─ 俺がこんな体になったのは、黒魔法士が魔法を掛けたから

─ 解術は掛けた黒魔法士本人か、その魔力を喰った魔法士にしか出来ない

「魔法学院で、そう言われたのか」

 その返事に、叩いたのは1回。