まだ誰も知らない恋を始めよう

 別れ際、つい抱き締めてしまった俺に、「愛してる」と言ってくれたダニエル。
 
 両親には恋人だと偽っているからこその愛の言葉なのに、嬉しくて顔が情けない位に緩んで、彼女を驚かせたと思う。


 シーズンズまで車で送ると申し出たのに、ダニエルはホテル前からバスに乗るから、とそれを断り。
 本館に戻る父に誘われ、それは断る事が出来ずに移動車に乗り込む後ろ姿を、俺はそのまま見送るしか無かった。



 これ以上の迷惑はかけられないと、自分から離れようとしたのに。
 彼女のお陰で想定よりもスムーズに両親に『見えない俺』は理解されて、こうして自宅に帰れた。
 

 これで良かったんだ、俺さえ居なければ。
 彼女は、ダニエル・マッカーシーは、以前の生活に戻れる。


 そう思おうとしたけど、現実はそんなに甘く無いのも分かっている。 
 俺に関わったせいで、隠していた能力を魔法学院の2人にバレて。
 赤毛のベッキーはダニエルの力については報告しないとは言ってくれたが、それもいつまで保つか分からない。