まだ誰も知らない恋を始めよう

 そんなわたしを、ペンデルトン夫人が抱き締める。


「ひとりぼっちのあの子を支えてくださって、本当にありがとうございました。
 フィンが家へ戻ってこられたのは、貴女のおかげだわ」

 こんな感じでの、夫人からの御礼と抱擁は何度目になるだろう。


「私からも御礼を言わせてください。
 本当に感謝しています」

 そう言って、ペンデルトン氏はわたしの手を固く握る。


 確かに仕事の入り時間まではまだ余裕は有るけれど。
 親子水入らずで、ゆっくり過ごして欲しくて、早々に辞去することにしたのだ。


「また、マッカーシー様にお時間がある時に、ぜひ……」

 ペンデルトン氏のこのお誘いは、食事の事なのか。
 それとも、謝礼の事なのか。
 有耶無耶のまま、わたしも「はい、ぜひ」なんて微笑んでみせた。 
 
 多分、この『後日』はわたしの方から働きかけない限り、やって来ない。
 

 ホテル前からバスに乗って、シーズンズまで行くつもりだったわたしに、ペンデルトンご夫妻から待ったをかけられた。
 運転手付きペンデルトン家自家用車で、お店まで送ってくださると言う。
 
 それはとても楽だし、ありがたいお申し出なんだけれど、面倒な事でもあり、失礼ながら再び辞退させていただいた。