まだ誰も知らない恋を始めよう

「自分は家を出た事になっているから、自分の部屋ではなく、ホテルで夜を過ごして、午後からは大学へ通っていました。
 彼は、奥様には元に戻ってから会いに行くと決めていたようです」


 フィンは、ペンデルトン氏とは冷めた関係であるように話していたけれど。
 やはり消えた息子を密かに探されていたし、この長い長い父としての問いかけを聞いている限り、それは彼の思い込みのような気がした。


 そして夫人はと言うと、涙をたたえた瞳でわたしの隣を見つめていた。 
 さっきまでは視線を合わせていただけなかったが、こうして真正面から見つめられると、夫人とフィンはよく似ている、と改めて思った。

 たったひとりの息子。
 どれ程大切に、大事に想ってきたか。
 そのご両親の心情を思うと、わたしも泣きたくなった。


「……ダニエル、ふたりに、愛してる、と伝えて」

 ご両親の顔を見つめ、途切れ途切れになった彼の声も震えている。


「奥様、彼が、おふたりに、愛してる、と」

「フィニアス、お前……」