まだ誰も知らない恋を始めよう

「いいえ、こちらこそ、きちんとご挨拶が出来ておリませんでした。
 ダニエル・マッカーシーと申します。
 ご子息とは同じ大学の同級生で、史学部に在籍しています。
 ……先程の事もわたくしの方が、ご心配で憔悴されている奥様に失礼な物言いをしてしまいまして、奥様を想うあの方を怒らせてしまったのです」 

「わたくしも改めて、ご挨拶させてください。
 ルディア・ペンデルトンと申します。
 先程から失礼な真似をして、本当に申し訳ありませんでした」


 グレンダに見せた怒りから一転して、父が丁寧な挨拶をダニエルにすれば、少し落ち着いた母も彼女に頭を下げた。
 ダニエルの身分は子爵令嬢なので、その対応は当たり前なのだが、さっきまでの扱いは酷いものだった。


「ごめん、君の事を詐欺師なんて…… 
 本当に申し訳ありません」

「いいの、気にしないで。
 貴方が謝る事じゃない」

 俺がダニエルの隣に戻り謝まると、彼女は俺に笑顔を向けてくれた。


「そこに、フィニアスが? 居るのですか?」


 両親が会話する俺たちの方を見ている。
 だが、聞こえるのは彼女の言葉だけ。
 俺の声は両親には聞こえない。

 父が尋ね、ダニエルが頷いた。