まだ誰も知らない恋を始めよう

「で、でも、悪魔祓いの事も、霊能師の事も知られているし、それに誰も触っていない花瓶が落ちたわ!」

「何か、何かトリックが有るのです!
 詐欺師の手口に騙されちゃ……」

 詐欺師? グレンダはダニエルの事を詐欺師と言ったか!?
 詐欺師って言うのは、あのインチキ司祭や霊能ババアの事だろ!


 移動した俺は、次は重いカーテンを引っ張って、一気に引き落とした。
 ビリビリに引き裂けたら、もっと脅せるのだろうけど、厚手のカーテンを引き裂くのは俺の力では無理だから、勢いよく引っ張って落とすしか出来ない。

 渾身の力を込めて派手に落とせば、母とグレンダが恐怖で固まった。


「フィン、もう止めて!」

 ダニエルが立ち上がって、俺を制止しようとした時、父が応接室に入ってきた。



「ザカリー! 助けて!」

「え……旦那様?
 よくぞ、お戻りくださいました!」


 30分後になると言っていた父がこんなに早く別邸へ戻ってきていたとは、母もグレンダも思っていなかったのだろう。
 母は立ち上がって父に駆け寄り、グレンダが慌てて伸ばした手は母を掴まえられなかった。
 元伯爵令嬢の母がこんなに素早く動いたのを、俺は初めて見た。